個人民事再生の清算価値とは(最低支払額の計算)

個人民事再生では、債務総額(基準債権の総額)に応じて、再生計画による弁済総額(計画弁済総額)の下限が定められています。

たとえば、債務総額が100万円から500万円までの場合の、計画弁済総額の下限は100万円です。つまり、再生計画案を作成する際には、最低でも100万円を支払うとの弁済計画でなければなりません。

また、小規模個人再生でなく、給与所得者等再生を選択した場合には、計画弁済総額を可処分所得の2年分以上にしなければならないとの要件(可処分所得要件)もあります。

清算価値保障の原則

上記は民事再生法に定められている計画弁済総額についての要件ですが、これに加えて、清算価値保証の原則といわれるものがあります。

この要件によれば、計画弁済総額が「債務者が自己破産した場合に、債権者が受けることができる予想配当額(清算価値)を下回ってはならない」とされています。簡単にいえば、個人民事再生では、最低限でもその人が持っている財産の額以上は支払わなければならないということです。

たとえば、生命保険の解約返戻金見込額が150万円だとすれば、債務総額が500万円であったとしても、計画弁済総額の下限は100万円ではなく150万円になるわけです。

また、不動産の査定額が残債務額を超えている場合にも、その超えている部分が清算価値に加算されます。住宅ローンの支払いが残り少なくなってきているようなときには、清算価値が多額になることもありますから、個人民事再生の利用を検討するに当たって注意する必要があります。

清算価値の計算

清算価値は、個人民事再生の申立時に作成する財産目録により計算されます。この財産目録に書くべき財産は、申立人(再生債務者)が持っている財産の全てですが、実際には裁判所の書式を利用して次のようなものを記載することになります。

  1. 現金
  2. 預金・貯金
  3. 貸付金
  4. 積立金(社内預金、財形貯蓄等)
  5. 退職金制度(ある場合は、今、退職したら支払われるであろう退職金見込額)
  6. 保険の解約返戻金(生命保険、損害保険、火災保険等)
  7. 有価証券等(株券、社債、ゴルフ会員権等)
  8. 電話加入権
  9. 自動車、バイク等
  10. 高価な品物(過去5年間で購入価格が20万円以上のもの)
  11. 不動産
  12. 敷金
  13. 相続財産(遺産分割未了の財産も含む)

生命保険等の保険解約返戻金がある場合、その解約返戻金見込額の全額が清算価値に算入されます。ただし、契約者貸付を受けているときには、解約返戻金見込額から契約者貸付の残額を差し引いた金額を財産目録に記載します。

退職金については、退職金見込額の8分の1を清算価値に加えるとする取り扱いの裁判所が多いと思われます。個人民事再生の手続きをする際に退職するわけではなく、現実に退職するときになって満額の退職金が得られるとは限らないので、現時点での見込額よりも少ない金額を清算価値としているのです。

不動産については、住宅ローンがある場合には、不動産の査定額から残債務額を差し引きます。つまり、残債務額の方が多い(オーバーローンの状態)であるときには、不動産の清算価値はゼロとなります。

財産目録(最高裁書式)

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