時効完成前の内容証明郵便による請求
裁判所から支払督促が届いたのご相談がありました。債権者は債権回収会社(サービサー)で、もともとの借入先である消費者金融から債権譲渡を受けたとのことです。
最後に返済したときから相当期間が経過していたため、督促異議の申立をすると共に、内容証明郵便で消滅時効の援用をしました。相手方が消滅時効が完成していることを認める場合、その後に訴えを取り下げてくることが多いのですが、今回は裁判所から「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」が被告訴訟代理人司法書士宛てに送られてきました。
どうして訴えを取り下げてくれないのかと疑問に思いつつも、答弁書を提出して相手方の主張を待つことにしたこころ、原告から届いた準備書面で事情が判明しました。
内容証明郵便による催告
最後の返済の時から10年以上が経過していたものの、原債権者である消費者金融により貸金返還請求訴訟が提起され、その勝訴判決が確定していることが判明しました。したがって、消滅時効時間は、その判決確定の時から10年となっていたわけです(民法174条の2第1項)。
そして、今回のケースでは判決確定の時からであっても10年が経過していたのですが、それでも消滅時効は成立していませんでした。
その理由は、判決確定の時から10年が経過する前に、内容証明郵便による催告がおこなわれていたのです。催告したときから6ヶ月以内に支払督促の申立てがおこなわれたことで、消滅時効の中断の効力が生じたわけです(民法147条、153条)。
債権者により貸金返還請求訴訟が提起され判決が確定しているものの、その事実をご依頼者が把握していないというケースは少なくなくありません。けれども、裁判を起こされたときからであっても10年が経過しているため、結果としては消滅時効が成立しているということも多いです。
しかし、今回は債権譲渡を受けた債権管理回収会社(サービサー)が、判決確定の時から10年以内に内容証明による催告をし、更にそれから6ヶ月以内に支払督促の申立をしてきています。そうなれば、消滅時効は中断することになりますから、結果としては分割弁済による和解を成立させました。
繰り返しになりますが、内容証明郵便による催告と、それから6ヶ月以内に支払督促の申立(または、訴訟の提起)がなされれば時効中断の効力が生じます。そうなってしまえば、訴えの却下又は取下げの場合(民法149条)を除いては、判決確定の時から再び10年の時効期間がスタートすることになるのです。
(時効の中断事由)
第147条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一 請求
二 差押え、仮差押え又は仮処分
三 承認
(裁判上の請求)
第149条 裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。
(催告)
第153条 催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事事件手続法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。
(中断後の時効の進行)
第157条 中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。
2 裁判上の請求によって中断した時効は、裁判が確定した時から、新たにその進行を始める。
(判決で確定した権利の消滅時効)
第174条の2 確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
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