不動産を所有している方が亡くなられたときには、相続を原因とする所有権移転登記をおこないます。これがいわゆる相続登記です。

しかし、相続登記をするために建物の登記事項証明書を取得してみたところ、所有権保存登記がおこなわれていないのが判明することがあります。この場合、登記事項証明書には「表題部」があるのみで、「権利部(甲区)」が存在しません。

この記事では、相続人による所有権保存登記のほか、表題部の所有者が被相続人との共有である場合、共有者である相続人が住所移転をしている場合の登記手続きについて備忘録的に記します。

所有権保存登記(共有者に相続が開始)
1.相続人による所有権保存登記
2.表題部所有者が被相続人との共有である場合
3.共有者である相続人が住所移転をしている場合

1.相続人による所有権保存登記

表題部のみ登記事項証明書は次のような具合です。「表題部 (主である建物の表示)」があるのみで、「権利部(甲区)」がないわけです。

登記事項証明書(表題部のみ)

この場合、不動産を相続した相続人により所有権保存登記をします。

表題部の所有者である被相続人名義で所有権保存登記をした後に、相続を原因とする所有権移転登記をするというような必要はなく、相続人の名義に直接の所有権保存登記ができるわけです(相続人による所有権保存登記はこちらをお読みください)。

2.表題部所有者が被相続人との共有である場合

上記の登記事項証明書では、表題部所有者が甲野一郎、甲野一夫の共有になっています。そして、甲野一郎が亡くなったことにより相続登記をおこなおうとした際に、所有権保存登記がなされていないのが判明したわけです。

この場合に、甲野一郎持分を相続により甲野一夫が取得したのであれば、1件の所有権保存登記により甲野一夫の名義にすることができます。相続を証する書類としての、被相続人の戸籍類や遺産分割協議書等が必要であるのは、通常の相続登記(所有権移転登記)と同様です。

申請書の記載については、申請人に(持分2分の1につき被相続人甲野一郎)のように書きます(『登記官からみた相続登記のポイント』新日本法規476ページ)。

3.共有者である相続人が住所移転をしている場合

本件では、相続人である甲野一夫の住所が、表題部に書かれている住所から移転しています。この場合でも、事前に表題部の所有者の住所変更登記をすることなしに、住所の変更を証する書面を添付して所有権保存登記をすることができます(登研213号)。

所有権保存登記をした後の登記事項証明書は次のようになります。所有権保存登記をしたことにより、新たに「権利部(甲区)」ができています。

結局、表題部の所有者が被相続人との共有であり、共有者である相続人が住所移転をしていても、1件の所有権保存登記により相続人の名義に登記をすることが可能であるわけです。

登記事項証明書(所有権保存登記)