申請情報(登記申請書)は、登記の目的及び登記原因に応じて1つの不動産ごとに作成するのが原則ですが、同一の登記所の管轄区域内にある2以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときなど、複数の不動産について同一申請書により一括申請できる場合があります。

個々のケースで同一申請書による一括申請が可能かについては、長年にわたり不動産登記業務をおこなっていても判断に迷うことがあります。今回、複数の土地についての登記名義人住所変更の登記をする際に、同一申請書による一括申請ができるのか即断できなかったので、先例等を調べてみました。

1.現在の登記簿上の住所が違う場合
2.共有者の住所の変更登記の一括申請
3.同一申請書による一括申請ができる場合

1.現在の登記簿上の住所が違う場合

同一の登記所の管轄区域内にある土地A、土地Bを所有しているが、取得した時期が違うために異なる住所で登記されています。

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次のような順序で住所移転をしており、土地Aを取得したのは「松戸市松戸100番地」、土地Bを取得したのは「松戸市新松戸一丁目1番地」に住んでいるときだったわけです。

住所移転の経緯

今回、現住所である「流山市若葉台1番地の1」への登記名義人住所変更登記をする場合、土地A、土地Bについて同一申請書による一括申請をすることはできるのでしょうか。

登記名義人住所変更登記では、複数回の住所移転をしているときでも、登記原因の日付として記載すべきは最終の住所移転日のみですから、土地A、土地Bの登記原因は同一であり当然に一括申請できるようにも思えます。

しかし、登記原因の日付として記載すべき年月日は同一であっても、現実には土地Aについては住所移転が2回、土地Bは住所移転が1回のみなので、登記原因が同一と言い切ってよいのかが疑問になりました。

結論としてはそのものズバリの質疑応答が見つかったので、同一申請書による一括申請は可能であるとの結論に至りました。

同一の登記所の管轄内にある甲不動産についてA住所、乙不動産についてB住所(Aより転住)で所有権の登記を受けた者がCに住所移転をしたので、甲・乙両不動産につき登記名義人の住所変更の登記を申請する場合は、同一の申請書によりすることができる(登研283号)。

今回のケースは所有者が同一人なので、難しく考えるまでもないような気もしますが、少しでも疑問に感じたら先例等を調査するようにしています。登記名義人住所変更の登記もなかなか簡単にはいかないことが多いです。

2.共有者の住所の変更登記の一括申請

こちらは1つの土地を共有している場合の、共有者の住所変更登記の一括申請についてです。

共有者の住所の変更登記の一括申請

土地Aの共有者である山田一男、山田花子の2人が、同一の日付で住所移転をした場合、同一申請書による一括申請が可能です。

不動産の共有者甲及び乙の登記簿上の住所がそれぞれA及びBである場合において、甲及び乙が同一の日付でCへ住所移転したときには、便宜、同一申請書により登記名義人表示変更の登記の申請をすることができる(登研575号)。

3.同一申請書による一括申請ができる場合

申請情報(登記申請書)は、登記の目的及び登記原因に応じ、1の不動産ごとに作成するのが原則ですが、一括申請できる場合について次の規定があります。

・不動産登記令 第4条

申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。

・不動産登記規則 第35条

令第4条 ただし書の法務省令で定めるときは、次に掲げるときとする。

(1~7 省略)

8 同一の登記所の管轄区域内にある一又は二以上の不動産について申請する二以上の登記が、いずれも同一の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記であるとき

9 同一の不動産について申請する二以上の権利に関する登記(前号の登記を除く。)の登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるとき。

10 同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記が、同一の債権を担保する先取特権、質権又は抵当権に関する登記であって、登記の目的が同一であるとき。

条文により規定されているのは上記のみなので、個々のケースで同一申請による一括申請が可能であるかについては、やはり先例等の調査が必要になるわけです。