姻族(いんぞく)とは、婚姻により発生する親族関係のことをいい、結婚することにより配偶者(結婚相手)の父母などとの間で姻族関係が生じます。そして、民法では3親等までの姻族を親族の範囲としています。

死後離婚の方法(姻族関係の終了)【目次】
1.姻族関係はいつ終了するのか?
2.配偶者の死後に姻族関係を終了させるには
3.死後離婚の方法はあるのか
4.誰が扶養義務を負うのか
5.配偶者との死別後に再婚した場合の姻族関係

1.姻族関係はいつ終了するのか?

婚姻することにより生じた配偶者の父母などとの姻族関係はいつ終了するのでしょうか?

まず、離婚をした場合、配偶者の血族(父母など)との姻族関係は終了します。離婚をすれば夫婦の縁が切れるわけですから、夫の父母などとの関係も切れるのは当然だといえます。

ところが、夫婦の一方が死亡したときには配偶者の血族との姻族関係が継続するのが原則です。たとえば、夫が死亡した場合でも、残された妻と、舅(しゅうと)、姑(しゅうとめ)との姻族関係は続くわけです。

姻族関係があるといっても、同居義務があったり、互いに相続人になるようなこともありませんから、通常はあえて姻族関係を終了させる必要は無いはずです。それでも姻族関係を終了させたいと考えるのは、死亡した配偶者の親族との縁を切りたいというような精神面から生じる理由によるのが通常だと思われます。

ただし、姻族関係があるままだと、配偶者の死後であっても舅や姑の扶養義務を負う可能性があることは知っておいてもよいでしょう。

2.配偶者の死後に姻族関係を終了させるには

そこで、生存配偶者が姻族関係を終了させたいと考えるときは、姻族関係終了届を本籍地か住所地の市区町村に出します。姻族関係終了届の提出には期限がありませんから、望んだときにいつでも手続きをすることができます。

姻族関係を終了するにあたって姻族の同意を得る必要はありません。また、家庭裁判所の許可なども不要で、市町村への届出のみで手続きは済みますから、法律専門家に相談や依頼する必要も通常はありません。

なお、姻族関係を終了させても、夫婦であったことには変わりありませんから、死亡した配偶者の遺産を相続する権利を失うことはありません。

(離婚等による姻族関係の終了)
民法第728条 姻族関係は、離婚によって終了する。
2 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。

3.死後離婚の方法はあるのか

姻族関係終了届を出すのは、配偶者の死後に、配偶者の血族との姻族関係を終了させるための手続きであることから、死後離婚といわれることもあるようです。

ただし、婚姻中の夫婦の一方が死亡すると婚姻は解消されますから、現実には配偶者の死後に離婚をすることはできません。そこで、姻族関係を終了させることにより、姻族関係に関しては死亡した配偶者と離婚したのと同様の効果が生じるとの意味合いにより、死後の離婚との表現が使われるようになったのでしょう。

4.誰が扶養義務を負うのか

扶養義務を負うのは直系血族および兄弟姉妹であるのが原則です。直系血族と兄弟姉妹は互いに扶養義務を負います(民法877条1項)。

ただし、「家庭裁判所は、特別の事情があるときは、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる(同条2項)」とされています。

3親等内の親族に扶養義務を負わせ、扶養料の支払いを求めるときは、家庭裁判所へ「扶養義務の設定審判申立て」をします。

そして、家庭裁判所が「特別の事情」があると判断する場合には、扶養義務を設定する審判がなされますが、この特別の事情の存否についての判断は厳格におこなうものとされています。

特別な事情があるとされる具体的な例としては、かつて特別な経済援助を受けていたことがあるとか、扶養を求める相手方が、申立人が受けるべき遺産を単独で相続している場合などが考えられます。

5.配偶者との死別後に再婚した場合の姻族関係

姻族関係終了届を出さない限り、配偶者との死別後に再婚をしたとしても、前配偶者の血族との姻族関係は終了しません。つまり、現在の配偶者の血族と、死別した配偶者の血族、双方についての姻族関係があることになるわけです。

それによって問題が生じることはあまり考えられませんが、複数の姻族関係が生じている状態であるのは事実です。したがって、前配偶者の両親などに対する扶養義務を負うことも法律上はあり得るわけです。

ただこの場合でも、必要に応じて姻族関係終了届を出せば済むのですから、配偶者と死別した後に再婚するときはすぐに姻族関係終了届を出して置いた方が良いというほどの問題ではないでしょう。