空き家になっている建物が近くにあると、防災や防犯上の問題がありますし、時間の経過により倒壊の恐れが生じることもあります。空き家に所有者がいるならばその管理責任を負うのは当然として、所有者が死亡し相続人がいないような場合にはどうすればよいのでしょうか。

相続財産管理人選任の申立て

相続人のあることが明らかでない場合には、家庭裁判所は、利害関係人(または検察官)の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならないとされています(民法951条、952条)。

「相続人のあることが明らかでない場合」とありますが、法律上の相続人が不存在のときもこれに該当します。また、空き家の「隣家の所有者」であれば、その空き家が倒壊する恐れがあるようなときには利害関係人に当たると考えられますから、家庭裁判所へ相続財産管理人選任の申立てをすることができます。

ただし、相続財産管理人選任の申立てをするとき、相続財産が不動産だけで預貯金や現金がない場合には、家事予納金(数十万円から100万円程度)の納付が必要となることがあります。隣家の所有者が自ら申立をしようとする場合、そのお金を負担するのも申立人だということになります。

空家等対策の推進に関する特別措置法

平成27年2月26日に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」は、そのまま放置すれば倒壊などの恐れがある空き家への対策について定められた法律です。

この法律では、市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとるよう助言又は指導をすることができるとされています。また、過失がなくてこの助言もしくは指導などが行われるべき者を確知することができないときは、市町村長はその者の負担においてその措置を自ら行うこともできます。

「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいいます(空家等対策の推進に関する特別措置法2条2項)。

したがって、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態にあると認められる空家について、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づいてその空き家の除去をするよう、市町村長に申し出てみることも1つの方法です。

空家等対策の推進に関する特別措置法

 第14条(特定空家等に対する措置)

 市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる

2 市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。

3 市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる

(4~9 省略)

10 第3項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないとき(過失がなくて第1項の助言若しくは指導又は第2項の勧告が行われるべき者を確知することができないため第3項に定める手続により命令を行うことができないときを含む。)は、市町村長は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、市町村長又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。

(11~15 省略)