遺産分割協議が合意に至ったら、協議により不動産の所有権を取得するものとされた相続人に対して、相続を原因とする所有権移転登記をします。

このとき、不動産が被相続人名義のままだったならば、上記相続人に対して直接、所有権移転登記をします。遺産分割の効果は相続開始時にさかのぼって効力を生ずるので、被相続人の死亡時に、その相続人が所有権を単独で承継したことになるからです。

この登記は、所有権を取得した相続人を申請人として、単独で相続登記をすることができます。登記原因は「年月日相続」です(日付は相続開始の日)。また、遺産分割協議書は相続証明書の一部となります。

遺産分割協議による相続登記といった場合、このように「被相続人から不動産の所有権を取得した相続人に対しての所有権移転登記」をおこなうのが通常です。

共同相続登記後の遺産分割の場合

それでは、遺産分割協議が成立する前に、法定相続分の割合による共同相続登記がされていた場合はどうなるでしょうか。

このようなケースはあまり多くないかもしれませんが、法定相続による相続登記は、相続人中の1人からおこなうこともできるので、遺産分割をする前に共同相続登記がされていることもあります。

この場合、共同相続登記を抹消するのでは無く、遺産分割により所有権を取得した相続人を登記権利者、その他の相続人を登記義務者として、共同申請による所有権(持分)移転登記をします。登記原因は「年月日遺産分割」です(日付は遺産分割協議成立の日)。

この登記においては、遺産分割協議書が登記原因証明情報としての要件を満たしているときには、その遺産分割協議書が登記原因証明情報となります。また、登記義務者が共同相続により持分を取得した際の登記識別情報、および登記義務者の印鑑証明書も必要となります。

共同相続登記がされているときには、遺産分割協議の成立後、さらに不動産登記についても他の相続人の協力を得る必要があります。遺産分割協議書への署名押印だけでなく、登記義務者として登記申請の当事者となるわけです。この点が、被相続人名義から、直接に所有権移転登記をする場合と異なるので注意が必要です。

なお、共同相続登記の後に、遺産分割を原因とする所有権移転登記を申請する際の登録免許税の税率は、相続の場合と同様に課税標準額(固定資産評価額)の1000分の4です。