土地、建物など不動産を所有している方が死亡した場合、その不動産の名義を相続人へ変更します。このためにおこなうのが相続を原因とする所有権移転登記ですが、一般には相続登記といっています。

相続登記は、不動産所在地を管轄する法務局で手続をします。ご自分で法務局へ行って手続をおこなうのも不可能ではありませんが、専門的な知識が必要なため不動産登記の専門家である司法書士に依頼するのが通常です。

1.自分で相続登記をする方法

1-1.必要な戸籍等の収集

1-2.遺産分割協議書の作成

1-3.登記申請書等の作成

1-4.法務局への登記申請

2.相続登記に期限はあるのか(相続登記の義務化)

3.遺産相続手続は司法書士へ

1.自分で相続登記をする方法

相続人が2名以上いて、そのうちの1人の名義への変更をする場合には、遺産分割協議による相続登記をするのが通常です。

この遺産分割協議による相続登記を自分でするためには、次のような手順が必要となります。

  1. 被相続人の出生から死亡に至るまでのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)などを役所から取り寄せる
  2. 遺産分割協議書を作成し、相続人全員から署名と実印による押印をもらう。
  3. 登記申請書、相続関係説明図などの書類作成をおこなう。
  4. 登記申請書および必要書類の全てを法務局へ持参して登記申請をおこなう。

この自分で相続登記をするための手続きの流れについて以下に解説してみます。

この記事を読むだけで面倒に感じる方も多いかと思いますが、実際に自分で手続きをするとなると更に大変に思われるはずです。よって、いくら面倒でも自分で頑張ろうという方以外には、相続登記を自分でやろうとするのはお勧めできません

1-1.必要な戸籍等の収集

遺産分割協議による相続登記をするために市役所などで取得する必要がある書類には次のようなものがあります。

1.被相続人の出生から死亡に至るまでの連続した全ての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
2.被相続人の住民票除票(または戸籍の附票)
3.相続人全員の戸籍謄本
4.相続人全員の印鑑証明書
5.申請人の住民票
6.固定資産評価証明書

戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本は、本籍のある市町村役場などで取得します。生まれたときの本籍地、結婚したときの本籍地、死亡したときの本籍地など、複数の役所に請求しなければならない場合が多いですし、また、交付された戸籍を読み解くのも一般の方には大変なことが多いでしょう。

必要書類について詳しくは、遺産分割協議による相続登記の必要書類のページをご覧ください。

遺産分割協議による相続登記の必要書類

1-2.遺産分割協議書の作成

不動産やその他の遺産を誰が取得するかを記載した遺産分割協議書を作成し、相続人全員から署名押印をもらいます。押印は実印によりおこない、相続人の全員から印鑑証明書を提出してもらいます。

遺産分割協議書の内容に誤りがあると相続登記がおこなえない場合もあるので、間違いのないよう正確に作成する必要があります。そのため、司法書士に相続登記を依頼した場合は、司法書士が遺産分割協議書を作成するのが通常です。

遺産分割協議書の作成についてくわしくは、遺産分割協議書作成のページをご覧ください。

遺産分割協議書の作成

1-3.登記申請書等の作成

法務局へ提出する不動産登記についての登記申請書を作成します。また、登記手続き完了後に戸籍等の返却をしてもらうため相続関係説明図も作成するのが通常です。

登記申請書や必要な添付書類については、法務局ウェブサイトの不動産登記の申請書様式についてのページで詳しく解説されています。遺産分割協議に夜相続登記については、このページにある「20)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」の「記載例」をご覧ください。

上記リンク先のページには、登記申請書だけでなく、遺産分割協議書、相続関係説明図の例も掲載されています。さらに、登記申請書などについての解説及び注意事項など非常に詳しく書かれているので、この解説に従って書類作成をおこなえばご自分で相続登記をすることも可能だといえます。

1-4.法務局への登記申請

上記の手順により準備した書類等の全てを、登記する不動産を管轄する法務局へ持参し登記申請をおこないます。

登記申請は郵送によりすることも出来ますが、郵送による登記はすべての書類が完璧に整っていることが前提となりますから、一般の方が登記をする場合には法務局へ行く必要があると考えるべきです。

法務局へ登記申請書等を提出する際には登記完了予定日を確認するようにします。そして、登記申請書等の補正が不要である場合には、登記完了予定日以降に法務局へ行って、登記完了証、登記識別情報通知等を受け取ります。これで相続登記が完了です。

(2021/10/13 追記)法務局での相談について

令和3年3月1日から法務局での「登記相談」は「登記手続案内」に変わりました。この変更によりり、個々の事案に応じた具体的な登記申請書の作成を教えてもらったり、事前に申請書類の確認をしてもらうことは出来なくなっています。

かつては法務局へ行けば登記申請書の作成の仕方などを全て教えてもらうようなことも可能でした。そのため、法務局へ行って自分で相続登記をしたという方も少なからずいたようですが、現在では係員に相談しながら登記申請書を作成することは認められません。

また、法務局での登記手続案内も予約制となっています。いきなり法務局へ行っても相談をすることは出来ないので、各法務局による案内などをご覧になって事前に予約するようにしてください。

登記手続案内について(千葉地方法務局)
登記手続案内を利用される皆さまへ(東京法務局による)