このページは司法書士高島一寛(千葉県松戸市松戸1176-2)が自身の業務のための備忘録として作成するものです。参考にしていただくのは差し支えありませんが、内容に誤りがあったとしても一切の責任を負いませんしご質問なども承っておりません。あくまでも自己責任でご利用ください。

千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)への、不動産登記手続きのご相談・ご依頼をお考えの方は不動産登記のページをご覧ください。

相続による所有権移転登記の免税

相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)の登録免許税は、不動産の価額の0.4%(1000分の4)ですが、平成30年4月1日から令和7年(2025年)3月31日までの間、以下の免税措置があります。

なお、この租税特別措置法84条の2の3による、登録免許税の免税措置の対象となるのは土地のみです。建物については、原則どおり不動産の価額の0.4%(1000分の4)の登録免許税がかかります。

相続に係る所有権の移転登記の免税(租税特別措置法84条の2の3)
1.相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合(第1項)
2.不動産の価額が100万円以下の土地についての相続登記(第2項)

1.相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合

租税特別措置法第84条の2の3第1項により「個人が相続により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない」とされています(平成30年4月1日から令和7年3月31日までの間に登記をする場合)。

つまり、死亡している人を土地の所有権登記名義人とするため相続登記について、登録免許税が免税(0円)となるわけです。この規定が適用されるのは次のような場合です。

数次相続が生じており、かつ、最終相続人が1人の場合の相続登記をする場合に、第1次相続、第2次相続のそれぞれについて所有権移転登記をしなければならないケースがあります。

たとえば、被相続人の配偶者および子1人が相続人となったが、遺産分割協議や相続登記をおこなわないうちに配偶者が死亡したことで2次相続が開始し、結果的に子1人のみが相続人となった場合などです。

このときは、1件目で配偶者および子に対する所有権移転登記をし、2件目で配偶者から子に対する持分全部移転登記をしますが、この1件目の登記の際の登録免許税が一部非課税となります。

具体的には、「配偶者が所有権の移転を受ける土地の持分に相当する部分」の登録免許税が非課税となる訳です。

かつては、上記のように「数次相続で最終相続人が1人である場合」の相続登記では、遺産分割決定書というような名目の書面を作ることにより、1件の登記で最終相続人に直接の登記をおこなうことも可能でした。

ところが、現在では登記実務が変更となり、配偶者の生前に遺産分割協議をおこなっていたか、または、配偶者が特別受益者にあたる場合を除いては、上記のとおり2件の登記によるしかないことになっています(詳しくは、「相続人が1人なのに遺産分割協議書が必要なとき」をご覧ください)。

2件の登記をするとなると、登録免許税の負担が大きくなってしまうことになりますが、租税特別措置法第84条の2の3第1項により、1件目の登記の際の登録免許税が一部非課税となるわけです。

なお、登録免許税の免税措置の適用を受けるためには、免税の根拠となる法令の条項を申請書に記載する必要があります。相続登記の登録免許税の免税措置については、「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と申請書に記載します。この記載がない場合は、免税措置は受けられませんのでご注意ください。

2.不動産の価額が100万円以下の土地についての相続登記

土地についての相続(相続⼈に対する遺贈も含む)による所有権移転登記、または表題部所有者の相続人が所有権保存登記を受ける場合において、不動産の価額100万円以下の土地であるときは、平成30年11月15日から令和7年(2025年)3月31日までの間に受ける、その土地の相続による所有権移転登記、または令和3年4月1日から令和7年(2025年)3月31日までの間に、その土地の表題部所有者の相続人が受ける所有権保存登記については、登録免許税を課さないこととされました。

上記の相続登記等が、不動産の所有権の持分の取得である場合には、その不動産全体の価額に持分の割合を乗じて計算した額が不動産の価額となります。たとえば、土地の価額が1000万円であっても、被相続人の持分が10分の1である場合には、移転する持分の価額は100万円なので、登録免許税の免税措置の対象となるわけです。

なお、租税特別措置法第84条の2の3第2項の規定は、令和4年度の税制改正により、免税措置の適用期限が令和7年3月31日までに延長されるとともに、免税措置の適用対象が全国の土地に拡充され、不動産の価額が100万円以下の土地であれば、この免税措置が適用されることになりました。それまでは不動産の価額が10万円以下の土地が対象だったのが、100万円以下に引き下げられたことで、免税措置の対象となるケースが非常に多くなっています。

なお、登録免許税の免税措置の適用を受けるためには、免税の根拠となる法令の条項を申請書に記載する必要があります。相続登記の登録免許税の免税措置については、「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と申請書に記載します。この記載がない場合は、免税措置は受けられませんのでご注意ください。

租税特別措置法第84条の2の3 個人が相続(相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成30年4月1日から令和7年3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。

2 個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から令和7年3月31日までの間に、土地について所有権の保存の登記(不動産登記法第2条第10号に規定する表題部所有者の相続人が受けるものに限る。)又は相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、これらの登記に係る登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額が100万円以下であるときは、これらの登記については、登録免許税を課さない。

※所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行日は、平成30年11月15日です。

関連情報

死者名義への相続登記

既に死亡している相続人の名義にするための相続登記の手続についての解説です。

所有権登記名義人氏名変更(相続人不存在)

相続財産管理人が選任された場合、死亡している相続人名義への相続登記をした後に、相続人不存在を原因とする所有権登記名義人氏名変更をすることがあります。

不動産登記関連の各種情報へ >>