遺産相続に関する質問です。今回のご質問は、「再婚しても亡夫の遺産を相続できるか」です。

【質問】
夫の死亡により相続が開始したが、夫の両親との関係悪化により遺産分割協議がおこなえていない状態です。そのまま数年が経過するうち、新たに知り合った男性と再婚を考えるようになりました。もしも、再婚した場合、亡夫の遺産を相続する権利を失うことになりますか?

【回答】
相続は、死亡によって開始します(民法882条)。そして、相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。

つまり、相続は、被相続人の死亡と同時に、被相続人の財産の一切が相続人に承継される制度ですから、誰が相続人になるかについても相続開始時の身分関係により決まります。したがって、被相続人の死亡時に配偶者であったならば、その後に再婚したとしても、亡夫の遺産相続権が失われることはありません。

相続開始前に離婚していた場合

なお、ご質問の事例は、相続開始時(被相続人の死亡時)に、法律上の夫婦であったときです。この場合、その後に再婚したとしても、亡夫の相続人であることに変わりはないわけです。たとえば、亡夫との間に子が1人いたとすれば、妻と子の相続分はそれぞれ2分の1ずつとなります。

これがもし、被相続人が亡くなる前に夫婦が離婚していたとすれば、離婚後に相続が開始しても、元妻が相続人になることはありません。この場合には、子がいれば唯一の相続人として全財産を相続することになります。

両親の離婚と子の相続権

子の相続権は両親が離婚したとしても変わることはありません。

たとえば、両親が離婚したときに母を親権者に定めたとします。その後、父とは一切の交流がなかったとしても、父が死亡したときに相続人となります。つまり、両親が離婚しても、その2人の間の子は、父母双方の相続人となるわけです。

このことは、母が再婚し、その再婚相手と子が養子縁組をした場合であっても変わりありません。子は、実親である母の前夫、および養親(母の現在の夫)のいずれについても相続人となります。