相続登記に関連する先例・質疑応答などを集めてみました。司法書士高島一寛が自身で閲覧するために作成するものなので、参考にしていただくのは構いませんが、内容に誤りがあったとしても一切の責任を負いませんしご質問等も承っておりません。あくまでも自己責任でご利用ください。

松戸駅徒歩1分の高島司法書士事務所への相続登記(相続による不動産の名義変更)手続きのご依頼をお考えの方は、相続登記のページをご覧ください。


最終更新日:2017年2月22日

相続登記関連の先例・注意点など(目次)

1.相続放棄申述受理通知書による相続登記の可否
2.遺産分割協議書は1枚の用紙に連署する必要があるのか
3.登記名義人となる相続人の印鑑証明書の要否
4.数次相続で最終相続人が1人の場合の相続登記
5.除籍等が滅失している場合の相続登記について
6.検認済証明書のない自筆証書遺言による相続登記
7.名のみを記載した自筆証書遺言による相続登記
8.相続関係説明図による原本還付の取扱い
9.調停調書による相続登記での戸籍等の要否
10.被相続人の正確な死亡日時が判明しない場合の登記原因
11.被相続人の戸籍は何歳からのものが必要か
12.相続欠格者であることを証する書面
13.相続人の本籍と住所が違う場合に住民票は必要か

1.相続放棄申述受理通知書による相続登記の可否

相続の放棄があったことを証する情報として、「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会に対する家庭裁判所からの回答書」又は「「家庭裁判所からの相続放棄申述受理通知書」が添付されているときは、その内容が相続放棄申述受理証明書と同等の内容が記載されているものと認められるものであれば、これらを登記原因を証する情報の一部として提供することができる(登研808号)。

「その内容が相続放棄申述受理証明書と同等の内容が記載されているものと認められるものであれば」とのただし書きがあることに注意が必要。くわしくは、「相続放棄申述受理通知書による相続登記の可否」を参照

2.遺産分割協議書は1枚の用紙に連署する必要があるのか

同一内容の遺産分割協議書を数通作成し、それに各自が各別に署名捺印したものであっても、その全部の提出があるときは、遺産分割の協議書とみて差し支えない(登研170号)。

3.登記名義人となる相続人の印鑑証明書の要否

相続人A、B、Cの全員が不動産を特定して、これが物件をAが承継取得する旨の遺産分割協議書を作成し、B、Cは印鑑証明書付実印を押印しているが、Aは認印で印鑑証明書の添付がない場合でも、登記申請書に添付すべき遺産分割協議書とはなる(登研429)。

4.数次相続で最終相続人が1人の場合の相続登記

甲の死亡により、配偶者乙と甲乙の子丙が共同相続人となったが、相続登記未了の間に乙が死亡した場合において、甲から丙に相続を原因とする所有権の移転の登記をするためには、丙を相続人とする遺産分割協議書又は乙の特別受益証明書等を添付する必要があり、これらの添付がない場合には、乙丙へ相続を原因とする所有権の移転の登記をした上で、乙の持分について丙へ相続を原因とする所有権の移転の登記をすべきである(登研758)。さらにくわしい情報は、遺産分割協議後に他の相続人が死亡して当該協議の証明者が一人となった場合を参照。

5.除籍等が滅失している場合の相続登記について

相続による所有権の移転登記(以下「相続登記」という。)の申請において、相続を証する市町村長が職務上作成した情報(不動産登記令別表の22の項添付情報欄)である除籍又は改正原戸籍(以下「除籍等」という。)の一部が滅失していることにより、その謄本を提供することができないときは、戸籍及び残存する除籍等の謄本に加え、除籍等(明治5年式戸籍(壬申戸籍)を除く。)の滅失等により、「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書が提供されていれば、相続登記を受理して差し支えない(平成28年3月11日民二219)。さらにくわしい情報は、除籍等が滅失している場合の相続登記についてを参照

6.検認済証明書のない自筆証書遺言による相続登記

相続を原因とする所有権移転登記の申請について、検認を経ていない自筆証書である遺言書を、相続を証する書面として申請書に添付してされる場合には、不動産登記法第25条9号の規定により却下する取り扱いをすべき(平成7年12月4日民三4344)

7.名のみを記載した自筆証書遺言による相続登記

遺言証書に遺言者の名が自署されているものの氏の記載がない場合であっても、遺言者本人を特定することができないとする特別の事情がない限り受理される(登研671)。本例では、自筆証書遺言に「母 花子より」というような記載があったものである。

8.相続関係説明図による原本還付の取扱い

相続による権利の移転の登記等における添付書面の原本の還付を請求する場合において、いわゆる相続関係説明図が提出されたときは、登記原因証明情報のうち、戸籍謄本又は抄本及び除籍謄本に限り、当該相続関係説明図をこれらの書面の謄本として取り扱って差し支えない(平成17年2月25日民二457)。登記原因証明情報の一部として提供する、遺産分割協議書や遺言書、また、被相続人の住民票除票(または戸籍の附票)は別に原本還付の手続きが必要。住所証明情報として提供する住民票も同様。

9.調停調書による相続登記での戸籍等の要否

相続登記未済の不動産につき遺産分割調停が成立し、その登記を申請する場合、戸籍書類の添付は要しない(昭和37年5月31日 民事甲1489)。戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本の添付が不要なのだから、相続関係説明図の添付も必要ない。この遺産分割についての調停調書は正本でなく謄本でも差し支えない。なお、登記原因証明情報としての戸籍等は不要でも、住所証明書の添付が必要なのは当然。

10.被相続人の正確な死亡日時が判明しない場合の登記原因

被相続人の死亡日時が判明しないため、戸籍上「昭和○年○月○日から○月○日の間に死亡」と記載されている場合の当該被相続人の相続登記の登記原因は、「昭和○年○月○日から○月○日の間相続」として差し支えない(登研337)。また、戸籍の記載が「推定平成○年○月○日死亡」とあるときは「推定平成○年○月○日相続」、「平成○年○月○日頃死亡」のときは「平成○年○月○日頃相続」のように戸籍の記載に従うのが原則。

11.被相続人の戸籍は何歳からのものが必要か

相続人の身分を証する書面として、被相続人が15,16歳の時代からの事項の記載のある戸籍及び除籍謄本が必要(登研149)。なお、他に年齢を明確にした先例等の存在を知らないが、現在の登記実務では少なくとも13歳のときからの戸籍が必要だと思われる(13歳からの戸籍があれば事前に法務局への照会はせずに申請している)。

12.相続欠格者であることを証する書面

共同相続人中に相続欠格者がいる場合、その欠格者を除外して相続登記を申請するための「相続欠格者であることを証する書面」としては、当該欠格者の作成した書面(印鑑証明書付)または確定判決の謄本で差し支えない(昭和33年1月10日民事甲4)。

13.相続人の本籍と住所が違う場合に住民票は必要か

戸籍謄本による相続人の本籍と、遺産分割協議書に記載した相続人の住所とが異なる場合でも、戸籍謄本による相続人の氏名及び生年月日と、遺産分割協議書に添付の印鑑証明書に記載の相続人の氏名及び生年月日とが同一であるときは、その同一性を確認することができるものとして、住民票(本籍の記載入り)などの提出は不要(くわしい解説等は「相続人の本籍と住所が違う場合に住民票は必要か」を参照。