不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)には、所有者の住所および氏名が記載されています。この登記されている住所は、引っ越して住民票を移しても自動的に書き換わることはありません。そのため、登記簿上の住所が、ずっと昔の住所のままになっていることも多々あります。

そこで、売買や贈与などを原因とする所有権移転登記をするときには、現在の所有者(売主、贈与者)の住所が、登記簿上の住所と異なる場合、所有権移転登記をするの前に所有権登記名義人住所変更の登記をする必要があります。

それでは、相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)をするときに、所有者として登記されている被相続人の最終住所と、登記簿上の住所が異なる場合はどうでしょうか?

被相続人の最後の住所と、登記簿上の住所が異なる場合

結論からいえば、相続登記においては、被相続人の最終住所と登記簿上の住所が異なるときでも、事前に所有権登記名義人住所変更登記をおこなう必要はありません。被相続人の住所が旧住所のまま、相続人への所有権移転登記をすることができます。

ただし、被相続人がその不動産の所有者であることを証明するために、登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されている住所と、被相続人の最後の住所とのつながりが分かる除住民票(または、戸籍・除籍・改製原戸籍の附票)が、相続による所有権移転登記の際の必要書類となります。

具体的には、住民票除票(除住民票)に記載されている前住所が登記簿上の住所と一致すれば、それだけで証明が可能ですからその他の書類は不要です。また、登記簿上の住所がもっと前のものであれば、さらに戸籍(除籍、改製原戸籍)の附票などを取得することで、登記簿上の住所とつなげるよう試みます。

それでも、登記簿上の住所が出ている書類が取れないときには証明は不可能だということになります。公的な住所証明書となるのは、住民票(住民票除票)、または戸籍(除籍、改製原戸籍)の附票のみですから、これらの書類に登記簿上の住所が出ていない場合には、証明は不可能であることを前提にして他の方法によるしかありません。

登記実務においては、被相続人の登記簿上の住所と、最後の住所とのつながりを戸籍の附票などにより証明できない場合、除籍(改製原戸籍)の附票が廃棄済である旨の証明書のほか、被相続人についての不在籍証明・不在住証明、不動産の登記済証(権利証)、相続人による上申書などを提出しています。

個々のケースで何を提出すべきかは、管轄法務局での取り扱いを事前に確認すべきですが、司法書士に相続登記手続きを依頼した場合は、すべてを司法書士におまかせいただけますからご心配は不要です。

除住民票、戸籍の附票などが廃棄されている場合

住民票は除票になってから、戸籍の附票は除籍されてから、それぞれ保存期間は5年とされています。また、戸籍が改製された場合も、それから5年間が経過すると改製原戸籍の附票が取れなくなることもあります。

たとえば、千葉県松戸市では平成19年12月1日に戸籍のコンピューター化による改製が実施されており、現在では改正前の戸籍についての附票は取得できなくなっています。他の市区町村でも、コンピューター化による改製がおこなわれている場合、それ以前の戸籍の附票がすでに取れなくなっていることも多いでしょう。

そのため、10年、20年と昔の住所が記載されている書類を取得するのは難しいことが多く、現実にも、登記簿上の住所が記載されている除住民票、戸籍の附票などが取得不能なケースも決して珍しくありません。その場合でも、最終的に相続登記が不可能になることはありませんが、手続きをするに当たって余計な費用や手間がかかるかもしれません。

ご自宅不動産であれば、登記簿上の住所が現住所と一致していることが多いでしょうから、問題が生じることはあまり無いです。しかし、相続によって取得した場合など、実際に住んでいない不動産の場合には、登記簿上の住所がどうなっているのか把握されていない方も多いかもしれません。

もっとも確実なのは、引っ越しをする度に、所有している不動産のすべてについて登記名義人住所変更登記をしておくことです。また、可能であれば保存期間を過ぎる前に除籍(改製原戸籍)の附票を取っておくのも一つの方法です。除籍謄本、改製原戸籍の附票は、期間の経過とともに内容が書き換わることはありませんから、いつ取得したものであっても登記に使用することができるからです。