遺言書がある場合の遺産相続について、次のようなご相談がありました(実際のご相談とは相続関係などを少し変えています)。

  1. 被相続人は兄A。生涯独身で子もいない。
  2. 兄は生前に遺言書を作成しており、そこには、自身が所有している不動産を、弟Bと妹Cに2分の1ずつの割合で相続させると書かれている。
  3. 先日、兄が死亡したが、妹は兄よりも先に亡くなっている。

遺言により相続させるとされた妹には子がいるのだが、上記の遺言により、妹の子が妹の代襲相続人となるのか。


結論から申し上げると、上記のような遺言により、妹の子が代襲相続人となることはありません。

遺言のうち、弟Bに相続させるとの部分は有効なものの、妹Cに相続させるとの部分については、妹が遺言者よりも先に死亡したことにより効力を失っていると考えられます。

つまり、遺言者が所有する不動産の「持分2分の1を弟Bに相続させる」との遺言のみがあり、残りの2分の1については何の指定もされていないのと同じ状態になっているわけです。

ご相談の事例では、Aには、弟B、妹Cの他にも兄弟がいます。そのため、遺言による指定のない持分2分の1の相続については、法定相続人の全員による遺産分割協議により決定することとなります。

遺言者Aとしては、世話になったB、Cに遺産を相続させ、疎遠になっていた他の兄弟には何も相続させたくないとの意向だったようです。そこで、上記のような遺言書を作成しているわけです。

しかしながら、自分よりも妹Cが先に亡くなってしまったことで、遺言中の「妹に相続させる」との部分が無効になりました。

これにより、何も相続させるつもりが無かった、B、C以外の兄弟も相続権があることとなってしまったのです。

このような事態になるのを避けるためには、妹Cが亡くなった時点で遺言書を作成し直しておくか、または、最初に遺言書を作成するときに下記のような条項を入れておくべきでした。

遺言者は、遺言者の妹Cが遺言者の死亡前に又は遺言者と同時に死亡したときは、第○条に定める財産全部を妹Cの長男○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。

今回のご相談については、残念ながら遺言者のご意思に沿うと考えられるとおりに手続きを進めることは出来ませんでした。

これから遺言書を作成するならば、上記のような予備的遺言を入れることで、遺言者の望んだとおりに相続をさせることが可能となります。

遺言書を作成するときは、専門家に相談したうえで手続きを進めることをお勧めします。千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅徒歩1分)でも遺言書作成のご相談を承っています。

ご相談は予約制なので、ご相談予約・お問い合わせのページをご覧になって事前にご連絡くださいますようお願いいたします。

「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である(最判平成23年2月22日)。

弁護士法第23条の2に基づく照会(遺言書を添付した相続登記申請の受否について)(昭和62年6月30日民三3411)

当職が遺言執行者に指定された公正証書遺言に、「左記の不動産を、長男A、長女B、五女Eの3名に均等に相続させる」との1項がある。(法定相続人は7名)

その後Aが先に死亡し、ついで遺言者が死亡した。Aの相続人は、妻および1子A′である。

この遺言を執行する場合、Aの相続すべきものとされていた不動産の持分は、次のいずれによるか、登記実務上の扱いを、ご教示願いたい。

(1)上記条項を相続分の指定とみて、Aの代わりに代襲相続人A′が取得するので、遺言書を相続を証する書面の一部として相続による所有権移転申請ができるか。

(2)それとも、Aを民法994条1項の受遺者と同視し、この部分については、遺言が効力を失い、法定相続に従って相続による所有権移転の申請をするのか(分割協議が調わなければ7名の共有)。

回答

昭和59年5月25日付け書面をもつて照会のあつた標記の件については、遺言書中に、Aが先に死亡した場合はAに代つてA′に相続させる旨の文言がない限り、貴見(2)の取り扱いによるのが相当であると考える。