抵当権の抹消登記をする際、抵当権が消滅する前に抵当権者が吸収合併されている場合、抵当権抹消登記をする前に抵当権の移転登記をする必要があります。

住宅ローンの借入れにともない設定されている抵当権であれば、ローンを完済する前に抵当権者が吸収合併されている場合には、抵当権移転登記をしなければならないということです。

これがローンを完済した後に抵当権者が吸収合併されているのであれば、抵当権移転登記をすることなしに承継会社が登記義務者となって抵当権抹消登記をすることができます。

なお、抵当権抹消登記を司法書士に依頼する場合、その登記費用は借り主(抵当権設定者)の負担となりますが、抵当権移転登記の登記費用については抵当権者が負担するのが通常です。

登記手続きも抵当権抹消登記だけを行う場合に比べて難易度が高いので、抵当権移転登記と抹消登記をあわせて司法書士に依頼することをお勧めします(この場合、抵当権移転登記の費用は、司法書士から抵当権者に請求します)。

したがって、不動産登記の専門家以外の方が、抵当権移転登記のことをくわしく知る必要は無いのですが、参考までに登記手続について以下に記します。

1.抵当権移転登記が必要な場合の申請手続き

抵当権が消滅する前に、株式会社Bが株式会社Aを吸収合併している場合、次のように抵当権移転登記をします。

登記申請書

登記の目的 ○番抵当権移転

原因 平成○年○月○日合併

抵当権者 (被合併会社 株式会社A)
     東京都中央区○○町○丁目○番○号
     株式会社B
     (会社法人等番号 ××××-××-××××××)
     代表取締役 松戸 一郎

添付書類 登記原因証明情報 代理権限証書 会社法人等番号

(以下省略)

登記原因証明情報は、株式会社Aが株式会社Bに合併したことの記載のある商業登記の登記事項証明書ですが、株式会社Bの会社法人等番号を提供した場合にはこの登記事項証明書が不要となります(現在の会社法人等番号で登記記録を確認可能な場合のみ)。

よって、登記申請書の記載も「登記原因証明情報(添付省略)」となり、登記原因証明情報としての添付情報は一切不要であるわけです。

法人の承継を証する情報又は法人の名称変更等を証する情報の提供を要する場合において、当該法人の会社法人等番号を提供したときは、これらの情報の提供に代えることができるものとする(平成27年10月23日民二第512号)。

余談ですが、抵当権者である金融機関(信用金庫)から閉鎖事項証明書を交付されなかったため、会社法人等番号を提供するのみで登記申請をしてしまったところ、現在の会社法人等番号では合併に関する記録が確認できないと法務局から指摘されたことがあります。

はじめてする金融機関などについての登記の場合には、コピーでも構わないので閉鎖事項証明書(閉鎖登記簿謄本)の提供を受けて、事前に確認するべきでした。不動産登記で会社法人等番号を提供するようになり登記手続が省力化されましたが、抵当権者(金融機関等)がそれに慣れるまでは、司法書士がしっかりと確認する必要がありそうです。

2.抵当権移転登記が不要な場合の申請手続き

抵当権が消滅した後に、株式会社Bが株式会社Aを吸収合併している場合、次のように抵当権抹消登記をします(事前の抵当権移転登記は不要です)。

登記申請書

登記の目的 ○番抵当権抹消

原因 平成○年○月○日弁済

権利者 (被合併会社 株式会社A)
     東京都中央区○○町○丁目○番○号
     上記承継会社 株式会社B
     (会社法人等番号 ××××-××-××××××)
     代表取締役 松戸 一郎

添付書類 登記原因証明情報 登記識別情報(登記済証)
     合併証明書 代理権限証書 会社法人等番号

(以下省略)

登記原因証明情報は、抵当権解除証書などです。また、合併証明書は、抵当権移転登記をする場合の登記原因証明情報と同じなので、会社法人等番号を提供すれば通常は足ります。