不動産の登記申請は「登記の目的及び登記原因に応じ、1の不動産ごとに作成して提供しなければならない」のが原則です(不動産登記令第4条本文)。

しかしながら、家屋とその敷地である土地についての抵当権抹消登記を申請をする場合などでは、わざわざ建物と土地とを1件ずつ別々に登記申請をすることは通常ありません。

この記事で解説しているようなケースならば、一括申請できるのが当たり前のように感じるでしょうが、実際に登記をするのにあたっては判断に迷うこともあります。一括申請の可否については、抵当権抹消登記を一括で申請できる場合もご覧ください。

なお、ご自身で登記申請をしようとする場合を除いては、司法書士以外の方がここに書いてあるようなことを理解する必要はありません。

千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)へのご依頼をお考えの場合には、抵当権抹消登記のページをご覧ください。

設定者が異なる抵当権抹消登記の一括申請

所有者が異なる2つ以上の不動産に、同一の債権を担保するための抵当権が設定されています(共同担保)。この抵当権抹消登記をおこなう際に同一の申請書により、一括申請することは可能でしょうか。

たとえば、次のように土地と建物の所有者が異なっている場合です。親が所有している土地に、子が家を建てるような場合では、その土地と家を共同担保にして住宅ローンの借入をするのはよくあることです。

・土地 抵当権者:A信用保証 抵当権設定者(所有者):甲野太郎
・建物 抵当権者:A信用保証 抵当権設定者(所有者):甲野花子

結論からいえば、同一の申請書により、抵当権抹消登記を一括申請することができます。

ただし注意すべきは、必ず所有者である2人ともにより登記申請をおこなう必要があることです。不動産が共有の場合には、共有者の1人から保存行為として抵当権抹消登記申請をできます。しかし本例では、不動産は共有関係にないので、保存行為とはならないのです。

同一申請により一括して抹消登記できる場合

登記申請情報(登記申請書)は、「登記の目的」及び「原因」に応じ、1の不動産ごとに作成するのが原則ですが、一括申請できる場合について次の規定があります。

・不動産登記令 第4条

申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、1の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある2以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。

・不動産登記規則 第35条

令第4条 ただし書の法務省令で定めるときは、次に掲げるときとする。

(1~9 省略)

10 同一の登記所の管轄区域内にある2以上の不動産について申請する登記が、同一の債権を担保する先取特権、質権又は抵当権に関する登記であって、登記の目的が同一であるとき。

住宅ローンの借入にともない土地と家に抵当権を設定したのであれば、「同一の債権を担保する抵当権に関する登記」に当たります。そして、登記の目的は「抵当権抹消」ですからもちろん同一です。

そして、所有者(抵当権設定者)が同一であることは、同一の申請書による申請の必要条件ではありませんから、抵当権抹消登記を一括申請することができるわけです。