昭和23年1月1日、現行民法が施行される前に開始した相続では、旧民法の規定が適用されます(正確には、昭和22年5月3日の応急措置法施行のときから、現行民法とほぼ同様になっています)。

旧民法中の相続制度は、戸主権という身分権と家の財産をともに承継する「家督相続」と、家族(戸主以外の同籍者)の遺産を承継する「遺産相続」の2つに分かれていました。

今から相続登記をする場合であっても、相続開始が旧民法の施行当時であれば、原則として旧法(明治31年民法)が適用されます。したがって、相続開始後もずっと名義変更をしていなかったような場合、旧民法による手続きをおこなうこともあります。

以下は、実際に取り扱った事例に基づき、備忘録的に記すものであり、相続手続きや不動産登記の専門家でない一般の方がご覧になっても理解するのは困難です(実例に基づいていますが、相続関係などの詳細は変えてあります)。

実際に手続きを行おうとするときは、最初から相続手続きに精通した司法書士に相談なさることをお勧めします。松戸の高島司法書士事務所へのご相談は、ご相談予約・お問い合わせをご覧になって事前にご予約ください。

1.旧民法と現行民法による相続登記

相続関係は下の図のとおりです。土地が昭和16年に死亡したBの名義のままになっており、これをご依頼者であるFの名義にしたいとのご相談です。

くわしい解説は後でおこないますが、BからFの名義にするまでに4件の登記申請をおこないました。

最初の2件は旧民法による相続登記です。まず、Bから直系尊属である父母に対して「遺産相続」を原因とする所有権移転登記申請をします。続いて、父甲の死亡により長男Aが戸主となり家督相続するので、「家督相続」を原因とする甲持分全部移転の登記申請をしました。

その後は、AからFへのA持分全部移転、母乙からFへの乙持分全部移転の登記をそれぞれ申請します。この2件は現行民法による相続登記です。4件目は数次相続が生じていることもあり少し注意が必要ですが、とくに難しいことはありません。

これら一連の登記申請をすることにより、甲区2番から5番まで次のように登記がされました。なお、必ず4件の登記申請によるべきかは分かりませんが、少しでも確実な方法を選択するため、登記原因の発生するごとに順を追って登記することにしたのです。

2.家督相続、遺産相続による所有権移転登記

ご参考までに、4件の登記についての簡単な解説をします。なお、ほぼ同様の事例において現実に登記申請をおこなっておりますが、内容の正確性については一切の責任を負いかねます。

1.遺産相続による所有権移転登記
2.家督相続による所有権移転登記
3.現行民法による相続登記(数次相続を含む)

1.遺産相続による所有権移転登記

旧民法では、家族(戸主以外の同籍者)の死亡により遺産相続が開始します。相続順位は第1「直系卑属」、第2「配偶者」、第3「直系尊属」、第4「戸主」の順になっています。

今回の事例では、被相続人Bには配偶者も直系卑属もいないので、直系尊属である父甲、母乙が相続人となります(相続分はそれぞれ2分の1ずつ)。

登記申請書は次のとおりです(説明に必要な部分のみ)。

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登記申請書

登記の目的 所有権移転

原因 昭和16年○月○日遺産相続

相続人(被相続人 B)

千葉県松戸市松戸○○番地

持分2分の1 亡甲

千葉県松戸市本町○○番地

2分の1 亡乙

(以下省略)

この登記は法定相続によりますから、相続証明書となるのは被相続人Bの出生から死亡に至るまでの戸籍等です。

相続人の住所については、70年以上も前に死亡しており証明書類の取得が不可能であるため、死亡時の本籍を住所として相続登記を申請しました。

共同相続人のうち行方不明の者があって、その者の住民票又は戸籍の附票に住所の記載がない場合は、その者の戸籍の附票に住所の記載のない旨の証明書を添付し、その者の本籍を住所として相続登記を申請することができる(登研246号)。

また、土地の登記申請については、租税特別措置法84条の2の3第1項により非課税となります(解説は「相続に係る所有権の移転登記の免税」をご覧ください)

2.家督相続による所有権移転登記

1件目の相続登記により、土地の持分の2分の1が戸主である父甲の名義になりました。甲は昭和20年に死亡したため、旧民法の規定が適用され、新たに戸主となる長男Aが家督相続することとなります。

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登記申請書

登記の目的 甲持分全部移転

原因 昭和20年○月○日家督相続

相続人(被相続人 甲)

千葉県松戸市松戸新田○○番地

持分2分の1 亡A

(以下省略)

登記原因証明情報(相続証明書)となるのは、Aが家督相続した旨の記載のある戸籍等です。また、登記原因の日付は、前戸主の死亡日であり、家督相続届出の年月日ではありません。

1件目の登記申請と同じく、土地の登記申請については、租税特別措置法84条の2の3第1項により非課税となります

3.現行民法による相続登記(数次相続を含む)

3件目の登記申請では、2件目の登記で登記名義人となったAから、Fへの持分全部移転登記をおこないます。

Aが死亡したのは昭和63年なので、現行民法による相続登記となり特に留意すべき点はありません。被相続人Aの子である、相続人F、G、Hによる遺産分割協議書を添付しての相続登記となります。

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登記申請書

登記の目的 A持分全部移転

原因 昭和63年○月○日相続

相続人(被相続人 A)

千葉県松戸市新松戸一丁目○番地

持分2分の1 F

(以下省略)

さらに4件目の登記申請では、1件目の登記で登記名義人となった母乙から、Fへの持分全部移転登記をおこないます。

乙からAを経由してFが相続しているので、登記原因は下記申請書のようになります(数次相続の相続登記についてはこちら)。この登記申請に添付する、被相続人乙についての遺産分割協議書へは、相続人F、G、H、I、Jが署名押印します。

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登記申請書

登記の目的 乙持分全部移転

原因 昭和25年○月○日A相続 昭和63年○月○日相続

相続人(被相続人 乙)

千葉県松戸市新松戸一丁目○番地

持分2分の1 F

(以下省略)

なお、実際に取り扱った事例では、相続人はもっと多数であり何度も署名押印をいただくのは困難な状況でした。そこで、1度で確実に手続きを済ますために細心の注意を払って手続きを進めました。