以前に取り扱った、条件付所有権移転仮登記の抹消について、備忘録的に記します。

土地の登記事項証明書を見ると、古い仮登記が抹消されないままになっていることが時々あります。そのままにしておいてもすぐに不都合が生じることはないでしょうが、その土地を売却するようなときには事前に抹消することが求められるはずです。

そのような仮登記の抹消登記をしようとする場合、一般の方がご自分で登記手続きをするのは困難であり、不動産登記の専門家である司法書士に相談・依頼する必要があると思われます。また、どなたであってもこのページの記述を参考にしていただくことは差し支えありませんが、あくまでも自己責任でご利用ください。

1.混同による条件付所有権移転仮登記の抹消

2.相続人による仮登記の抹消

3.錯誤による条件付所有権移転仮登記の抹消

4.仮登記権利者の協力が得られない場合

1.混同による条件付所有権移転仮登記の抹消

条件付所有権移転仮登記の抹消

昭和50年9月1日売買(条件 農地法第5条の許可)を原因として、所有者AからBへの、条件付所有権移転仮登記がされました。

その後、昭和52年10月3日売買を原因として、AからBへの所有権移転登記がされています。

宅地等への地目変更がされたことで農地法の許可が不要になったため、新たな売買契約による所有権移転登記がおこなわれたのだと思われます。

この場合、Bが所有権を取得したことにより、条件付所有権は混同により消滅するので、その抹消登記をします。

この条件付所有権移転仮登記の抹消は、仮登記義務者Aが登記権利者、仮登記権利者Bが登記義務者として登記申請をおこないます。

また、仮登記名義人であるBが自ら申請する場合には、仮登記を受けたときの登記識別情報(登記済証)を提供して、単独で抹消登記をすることもできます。

しかし、本例では、Bは仮登記の抹消手続をすることなく死亡しています。

2.相続人による仮登記の抹消

仮登記の抹消は、仮登記義務者のほか、現在の所有権登記名義人が登記権利者となって申請することができます。

本例でいえば、現在の所有者であるCが登記権利者となって登記申請をおこなえるわけです。

登記義務者となるのは仮登記権利者であるBですが、Bは死亡しているため、Bの相続人全員が登記義務者となります。

よって、もしもBの相続人がCのみだったとすれば、Cは登記権利者兼登記義務者となり1人で登記申請がおこなえることになります。

また、Bの相続人がC以外にもいる場合には、その相続人の全員が登記義務者になる必要があります。

この登記についての登記申請書は次のようになります。

印鑑証明書は登記義務者全員のものが必要です。また、登記原因証明情報の要否については見解の対立があるようですが、要するとの立場に従いました(元登記官からみた抹消登記のポイント[新日本法規]224ページ参照)。

登記申請書

登記の目的 2番条件付所有権移転仮登記抹消

原因    昭和52年10月3日 混同

権利者   C

義務者  (被相続人 B)
      C
      ※Bの相続人がC以外にもいる場合には、その相続人の全員

添付情報  登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書 代理権限証書

(以下省略)

なお、この抹消登記の申請人については、Bの相続人が複数いる場合であっても、Cからの単独申請を認めて差し支えないとの見解もあります。(不動産登記の実務相談事例集[日本加除出版]247ページ、「混同を原因として所有権の移転請求権の仮登記を抹消することの可否」参照)。

3.錯誤による条件付所有権移転仮登記の抹消

まれなケースかもしれませんが、ここまで解説した例と同じように「条件付所有権移転仮登記」の後に、売買を原因とする所有権移転登記がされているのにもかかわらず、錯誤により条件付所有権移転仮登記の抹消をしています。

錯誤による条件付所有権移転仮登記の抹消

上記の例と同じく、昭和50年9月1日売買(条件 農地法第5条の許可)を原因として、所有者AからBへの、条件付所有権移転仮登記がされています。

ところが、その後に昭和50年7月1日売買を原因として、AからBへの所有権移転登記がされています。上記の条件付売買よりも前の日付で売買がおこなわれてしまっているわけです。

調べてみると、この土地が宅地に地目変更されているのは昭和50年9月よりも後のことだったので、昭和50年7月1日付の売買は農地法第5条の許可を受けておこなわれているはずです。

どうしてこのようなことになってしまったのかは分かりませんが、これでは混同が生じることはありません。

そこで、昭和50年9月1日の条件付売買契約は誤りであったものとして、錯誤を原因する条件付所有権移転仮登記抹消の申請をしました。

なお、この登記の申請人や添付情報は、上記の混同の場合と同様です。

4.仮登記権利者の協力が得られない場合

ここまで解説してきた例は、現在の所有権登記名義人が仮登記権利者の相続人だったため、仮登記抹消の申請人となるのは、現在の所有権登記名義人(およびその親族)のみでした。

ところが、下記の例では、BからCへ売買による所有権移転がされています。BとCとの間に親族関係などはなく、全くの他人です。

仮登記権利者の協力が得られない場合

本例の場合にも、仮登記抹消の登記義務者となるのは仮登記権利者であったBですが、このようなケースでは登記申請にB(またはBの相続人全員)の協力が得られないこともあるでしょう。

そこで、仮登記権利者が登記申請に協力せず、承諾書をもらうこともできない場合には、「当該登記名義人に対抗することができる裁判があったことを証する情報」を添付します(不動産登記令別表70項)。

くわしくは、過去に「混同を原因とする条件付所有権移転仮登記抹消」で書いていますので、そちらをご覧ください。