(最終更新年月日:2021/09/08)
令和3年4月21日、「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)が成立しました(同月28日公布)。
施行期日は、原則として公布後2年以内の政令で定める日とされていますが、相続登記の申請の義務化関係の改正については公布後3年、住所等変更登記の申請の義務化関係の改正については公布後5年以内の政令で定める日とされています。
このページには、「民法等の一部を改正する法律」により改正される、民法・不動産登記法改正についての情報を掲載していきます。
令和3年 民法・不動産登記法改正
1.相続登記の義務化
3.相続人申告登記
1.相続登記の義務化
改正後不動産登記法76条の2第1項
不動産登記法の改正により相続登記が義務化されます。
改正前の不動産登記法では、不動産の所有権など権利に関する登記について、登記申請することは義務ではありませんでした。相続により所有権を取得した場合であっても、その登記をするどうかは任意だったわけです。
それが、改正法では、「所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、その相続(または遺贈)により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない」というように、相続登記が義務化されたのです。
なお、上記規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処するとされています。
2.遺産分割後の登記申請義務
改正後不動産登記法76条の2第1項、76条の3第4項
改正法では、「法定相続登記(法定相続分による登記)、または相続人申告登記がされた後に遺産分割があったときは、その遺産分割によってその相続分を超えて所有権を取得した者は、その遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない」というように、遺産分割がなされたときの登記申請も義務化されました。
なお、上記規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処するとされています。
3.相続人申告登記
改正後不動産登記法76条の3
改正法により、不動産登記法76条の2第1項(相続登記の義務化)の規定により、所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨、及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができることとなります。
この申出をした人は、相続を原因とする所有権の取得にかかる、所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなされます。
また、相続人申告登記の申出があったときには、登記官は、「相続人申告」があった旨、並びにその「申出をした者の氏名及び住所」等を所有権の登記に付記することができるとされています。
なお、相続人申告登記がされても相続登記をしたことにはなりません。そのため、相続人申告登記がされた後に遺産分割があったときは、その遺産分割によってその相続分を超えて所有権を取得した者は、その遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければなりません。
4.住所等の変更登記の義務化
改正後不動産登記法76条の5
改正法により、所有権の登記名義人の氏名、住所などについて変更があったときは、その所有権の登記名義人は、その変更があった日から2年以内に、氏名、住所などについての変更の登記を申請しなければならないとされます。
不動産を所有している人が住所移転をした場合でも、住民票の住所が変更されるのと同じように、所有する不動産についての住所変更が自動的にされるわけではありません。この場合、所有権登記名義人住所変更の登記申請をする必要があります。
これまでは、住所変更の登記をしなくても通常すぐに不利益が生じることはなく、また、そもそも登記名義人住所変更の登記が必要であることを知らない場合も多かったため、住所変更等の登記がおこなわれずにいることが少なくありませんでした。
このことが所有者不明土地を発生させる大きな原因となっていたため、住所等の変更登記の義務化がされることとなったのです。なお、住所等の変更登記を申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、5万円以下の過料に処するとされています。
参照条文等
(相続等による所有権の移転の登記の申請)
改正後不動産登記法第76条の2 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
2 前項前段の規定による登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第4項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
3 前2項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
(相続人である旨の申出等)
第76条の3 前条第1項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
2 前条第1項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第1項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。
3 登記官は、第1項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。
4 第1項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第1項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
5 前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
6 第1項の規定による申出の手続及び第3項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。
(所有権の登記名義人についての符号の表示)
第76条の4 登記官は、所有権の登記名義人(法務省令で定めるものに限る。)が権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、当該所有権の登記名義人についてその旨を示す符号を表示することができる。
(所有権の登記名義人の氏名等の変更の登記の申請)
第76条の5 所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から2年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。
(職権による氏名等の変更の登記)
第76条の6 登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。
第164条(過料)
第36条、第37条第1項若しくは第2項、第42条、第47条第1項(第49条第2項において準用する場合を含む。)、第49条第1項、第3項若しくは第4項、第51条第1項から第4項まで、第57条、第58条第6項若しくは第7項、第76条の2第1項若しくは第2項又は第76条の3第4項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する。
2 第76条の5の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、5万円以下の過料に処する。
関連情報
・相続登記(千葉県松戸市の高島司法書士事務所)
・相続土地国庫帰属制度