以前に当事務所で取り扱った、根抵当権、条件付所有権移転仮登記、条件付賃借権設定仮登記の抹消の登記について備忘録的に記します。
相続した土地や建物の登記事項証明書を見ると、古い(根)抵当権や仮登記などが残ったままになっていることがあります。すぐに不都合が生じることはないとしても、その土地や建物を売却するようなときには事前に抹消することが求められるはずです。
そのような仮登記などの抹消をしようとする場合、一般の方がご自分で登記手続きをするのは困難であり、不動産登記の専門家である司法書士に相談・依頼する必要があると思われます。
また、どなたであってもこのページの記述を参考にしていただくことは差し支えありませんが、あくまでも自己責任でご利用ください(当事務所へのご相談は、松戸市にある当事務所までお越しいただく必要があります。このページに書かれていることについての、メールや電話によるお問い合わせは受け付けておりません)。
千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)では、条件付所有権移転仮登記、条件付賃借権設定仮登記の抹消やその他の不動産登記手続きについてのご相談を承っています。ご相談は予約制なので、ご相談予約・お問い合わせのページをご覧になって事前にご連絡くださいますようお願いいたします。
条件付所有権、条件付賃借権設定仮登記の放棄による抹消【目次】
1.根抵当権、条件付所有権、条件付賃借権の(仮)登記
Aが所有していた土地について、下記のとおりの登記がされています(この登記情報は説明に費用な部分のみを簡略化して作成しています)。
- 平成8年に、Aを債務者、Bを根抵当権者とする根抵当権を設定
- 平成10年に、平成8年設定の根抵当権確定債権の債務不履行を条件とする条件付所有権、条件付賃借権をいずれもBを権利者として仮登記
- 平成30年に、Aの死亡により、本件土地をCが相続
その後、相続した土地を売却しようとしたところ、不動産業者から、根抵当権等の抹消登記を事前にする必要があることを指摘されたことで、当事務所へ新規にご相談がありました。
今回のケースでは、すべての登記についての義務者となるB社とは、ご依頼者を通じてすぐに連絡を取ることが出来ました。現在も営業を継続している株式会社であり、商号や本店も当時と変わっていなかったのが幸いでした。
それでも、当時の担当者はすでに退社しており、詳しいことが分かる人はいないが、抹消登記の手続きには協力する。ただし、登記の必要書類についてはすべて用意して欲しいとのことでした。
2.放棄を原因とする抹消登記
上記のとおり、当時の取引の状況などが分かる方がいないため、根抵当権、条件付所有権移転仮登記、条件付賃借権設定仮登記の3つの登記について、全て放棄を原因とする抹消登記をすることとなりました。
そこで、まずは当事務所で放棄証書などの案を作成し、先方での確認後に押印をいただくことにより、登記申請をおこなっています。
ただし、根抵当権抹消の登記原因は放棄で問題ないとして、今回のケースでの条件付所有権移転仮登記、条件付賃借権設定仮登記の抹消についても放棄で良いのかについては、すぐに結論を出すことが出来ませんでした。
根抵当権の被担保債権については完済しているので、条件付所有権移転仮登記、条件付賃借権設定仮登記のどちらについても、条件不成就を原因とする抹消登記をすることも可能でしょう。しかし、取引の詳細が分からないまま、報告形式の登記原因証明情報を作成するのは困難です。
また、条件付賃借権設定仮登記については、存続期間が5年となっているので、存続期間満了を原因とする抹消も考えられます。
ただし、存続期間の延長をしている可能性なども廃除できないため、こちらも当時の状況等が分からないまま、報告形式の登記原因証明情報を作成するわけにもいきません。
そこで、結果としては、根抵当権、条件付所有権、条件付賃借権を全てこれから放棄していただくこととしました。そうすることにより、放棄を原因とする抹消登記がおこなえるわけです。
実際の手続きとしては、それぞれについての放棄証書を作成し、根抵当権、条件付所有権、条件付賃借権の順に3連件の登記申請をして無事に完了しています。
3.登記原因をどうすべきかの判断など
ここからは余談となります。
今回は登記義務者の協力を得ることが出来たため、問題となったのは、どのような原因により登記申請をすべきかということだけでした。抹消登記をすることに義務者が同意しているのですから、どのような原因によるべきかなど、単に登記手続き上の問題であるわけです。
それでも、仮登記の抹消については、詳しく解説している書籍や、先例などがなかなか見つからないので、実際に登記をするとなると頭を悩ませることも多いです。
司法書士によるブログなども多数参考にさせていただきましたが、『条件付権利は自由に処分することができるので、「放棄」を原因として登記できる・・・』と書かれているのを見たことで、条件付所有権の放棄も可能だろうと考えました。
(条件の成否未定の間における権利の処分等)
第129条 条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。
また、条件付賃借権については、『存続期間が延長されていないとは限らない(登記義務はないため)ので』、解除で抹消できるとの記述を見て、存続期間満了による必要はないと判断しました。
他の人が書いているものを鵜呑みにするべきではないとしても、司法書士本人が書いており、実際に無事に登記が完了しているであろうと思われるものは参考になります。
もちろん、民法や不動産登記法、更には不動産登記の実務に精通している司法書士であるからこそ、他人が書いていることの真偽を見分けることができるわけですが。
今回のような登記手続きについて、司法書士以外の方が自分で調べてみたとしても、正解に至ることは通常不可能だと思われますので、最初から司法書士に相談なさることをおすすめします。
なお、千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)が、このような登記について特別に詳しいということではありませんので、お近くの司法書士事務所へご相談いただければ問題ないかと思います。
当事務所へのご相談は予約制ですので、ご相談予約・お問い合わせのページをご覧になって事前にご連絡くださいますようお願いいたします(当事務所へのご相談は、松戸市にある当事務所までお越しいただく必要があります。このページに書かれていることについての、メールや電話によるお問い合わせは受け付けておりません)。