遺言書は法律に定められた方式により作成しなければなりません。

遺言の方式は民法により普通方式と特別方式の2つが定められていますが、ほとんどの遺言書は普通方式により作成されております(特別方式の遺言は、死亡危急時など特別な場合に作成するものです)。そして、普通方式の遺言にも、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。

実際に作成されている遺言書としては、自筆証書遺言、公正証書遺言のいずれかが圧倒的多数です。たとえば、平成22年度に全国の公証役場で作成された公正証書遺言が81,984件であるのに対し、秘密証書遺言は95件に過ぎません。

また、自筆証書遺言は誰にも言わず1人で書くこともできるため正確な数を知ることは不可能です。しかし、平成25年度に全国の家庭裁判所で受理された書遺言検認の新受件数が16,708件であることからしても、実際にはもっと多くの自筆証書遺言が作成されているはずです。

1.自筆証書遺言

自筆証書遺言は、紙とペンと印鑑さえあれば遺言者自身が1人で書くことができます。作成するのに費用はかかりませんし、他人に遺言の内容を知られることもありません。自筆証書遺言を作成する際に、必ず守るべきは次の4点のみです。

1.全文を自筆にする(すべてを手書きで直筆しなければなりません)
2.正確な作成日を書く(○年○月吉日のような書き方は駄目です)
3.戸籍通りの正しい氏名を書く
4.印鑑を押す

自筆証書遺言の大きなメリットは、費用をかけず作成できるため、生活状況の変化に応じて何度でも書き直しができることです。まずは自筆証書遺言を作成しておいて、後になって必要だと思ったときに公正証書遺言を作ることももちろん可能です。

上記のとおり、自筆証書遺言は手軽に作成できるものではありますが、法律に定められたとおりに作成しなけければならず、少しでも間違いがあるとその効力が認められない怖れがあります。したがって、不安がある場合には専門家に相談したうえで作成するのが確実です。

また、自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所での遺言書検認手続を受けなければならないので、遺言の執行を出来るまでに時間と手間がかかります。さらに、保管している間に紛失してしまったり、相続開始後に遺言書が発見されなければ意味がありませんから、保管方法に注意する必要があります。

2.公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場の公証人により作成されるものです。公証人という専門家が関与することで、法律的に有効な遺言を間違いなくすることができます。作成した遺言書の原本は公証役場で保管されますから、改ざん・紛失の心配がありません。また、自筆証書遺言では必ずしなければならない、家庭裁判所による検認手続が不要なので、相続人の負担が軽減されます。

公正証書遺言では、公証人が関与することに加え、2名の証人が必要とされるため、遺言の内容を完全に秘密にすることはできません(ただし、立会証人の手配も司法書士におまかせくだされば、遺言書作成の事実や、遺言内容をご家族に知られないようにすることも可能です)。

公証人の費用(手数料)がかかるので気軽に作り直すのには向きませんが、最も安心確実な遺言として公正証書遺言をお勧めしています。公正証書遺言の作成を、当事務所へご相談・ご依頼くだされば、遺言書案の作成から公証役場との事前打ち合わせまでの手続きを、すべて司法書士にお任せいただけます。また、立会証人の手配や、遺言書の保管・執行も承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

3.秘密証書遺言

秘密証書遺言を作成するためには、作成した遺言書に封をした状態で公証役場に持参します。そして、封がされた状態のまま、公証人による公証の手続きがおこなわれます。

秘密証書遺言は、自筆証書遺言と異なり全文を自筆する必要がないこと、また、公証人および証人2人以上の立会により作成するため、遺言書の存在が明らかになることなどがメリットだといえます。しかし、公証人は遺言内容に関与しませんから、自筆証書遺言に比べて法律的な有効性が高くなるものではありません。また、公正証書遺言と異なり、家庭裁判所での検認も必要です。

遺言内容を秘密にするのが目的であれば、自筆証書遺言を作成した上で、信頼できる知人または専門家(弁護士、司法書士)に保管を依頼しておけば済むのですから、秘密証書遺言を選択すべきケースは限られるでしょう。