遺産相続に関してのよくある質問と回答です。
(質問)
私は、嫁いだ先の両親(義父、義母)と一緒に暮らしています。夫はすでに亡くなっていますが、今さら私が家を出ることは考えられず、長男の嫁である私が年老いた両親(義父母)の世話をしています。義父が亡くなったときには、嫁である私も遺産を相続する権利があるのでしょうか。もしも、私に何の権利も無いとすれば、この家にずっと住み続けることが出来るのか心配です。
(回答)
義父と養子縁組をしている場合を除き、ご質問者(以下、「嫁」と表記します)には、義父の遺産を相続する権利は一切ありません。
嫁から見た義父は、配偶者である夫の父(直系尊属)に過ぎません。そこに法律上の親子関係は存在しませんから、嫁が義父の相続人となることはなく、遺産を相続する権利もありません。そのため、義父の遺産について、嫁は何らの権利も持ちませんから、相続が開始したときに不安定な立場に置かれる心配があります。
たとえば、義父が亡くなったときに、義母が土地や家などの遺産を相続したとします。その後も、嫁と義母の2人で暮らしていたとして、義母が亡くなったときにはどうなるでしょうか?法律的は当然の話ですが、嫁(子の配偶者)は相続人になりませんから、義母の法定相続人がすべての遺産を相続することになります。
まず、義母に子がいれば、その子が相続人となります。つまり、嫁(ご質問者)から見ると、夫に兄弟姉妹がいれば、その兄弟姉妹が相続人となるということです(第1順位相続人)。ただし、質問者とその夫の間に子がいれば、その子も相続人の一人となるので(代襲相続)、すべての権利が夫の兄弟姉妹に渡ってしまうことにはなりません。つまり、ご質問者夫婦に子がいない場合が、より問題だといえます。
次に、相続人になる子(または、その代襲者)がいない場合には、義母に兄弟姉妹(または、その子)がいれば相続人となります。つまり、義母の甥や姪にすべての相続権が行ってしまうこともあるのです。このようなケースは、義母に兄弟姉妹がいなく、さらにご質問者夫婦の間に子がいないような場合に限られますが、誰が法定相続人となるかについては必ず事前に把握しておくべきです。
嫁の寄与分は認められる?
相続人の相続分を修正するものとして、被相続人の財産の維持または増加について特別の貢献をした人に対し、本来の法定相続分を超える相続分を与えようとする寄与分の制度があります。
しかし、寄与分が認められるのは相続人であることが前提ですから、相続人ではない嫁(子の妻)に寄与分が認められることはありません。したがって、どんなに義父母のために貢献したとしても、そもそも相続人でないわけですから、財産を相続する権利を持つことはないわけです。
嫁に相続財産を引き継がせる方法
もしも、嫁が、義母の養子になったとすれば、第1順位の相続人として相続権を持つことになります。いわゆる婿養子の場合では、夫が妻の父母と養子縁組をしますが、相続対策を目的として妻が夫の父母と養子縁組するケースはあまりないでしょう。
そこで、採れるべき手段としては、義理の両親(義父、義母)が遺言書を作成しておくことが考えられます。遺言によれば、嫁(子の妻)に財産を引き継がせることができます。具体的には、次のように「遺贈する」旨の遺言をします。
第○条 遺言者は、遺言者は、遺言書の有する下記の不動産を長男○○の妻○○(昭和○○年○○月○○日生)に遺贈する。
遺言があったとしても、相続人の遺留分を侵害しているときにはその減殺請求をされることもあり得ますが、遺産に対して全く何の権利も無いよりは遙かにマシです。
繰り返しになりますが、義父母と養子縁組をしておらず、遺贈(遺言による贈与)も受けていなかったとすれば、嫁(子の配偶者)は遺産に対して一切の権利を持ちません。嫁の世話になっている義父(義母)としては、自分の遺産を誰が相続することになるのか、責任を持って考え対策をするべきでしょう。
遺言書の作成についても、千葉県松戸市の高島司法書士事務所にご相談ください。