(質問)
私は結婚するときに婿養子として妻の家に入りました。そこで、質問が2つあります。
- 義父が亡くなったときには、婿養子である私も相続人の1人になりますが、妻やその兄弟姉妹と、私との間で相続分には違いがあるのでしょうか?
- 婿養子にいった私は、実父についての相続権は無くなるのでしょうか?
(回答)
質問1について
「婿養子」とは、一般に婚姻時に妻の姓を名乗ることを選択し、さらに婚姻と同時に配偶者である妻の両親と養子縁組することを指します。養子は養親の相続人となりますから、ご質問のケースでご相談者がお父様(義父)の相続人となるのは当然です。
また、実子と養子の間で相続分に違いはありません。したがって、法定相続人が実子(相談者の妻)と養子(相談者)の2人であったとすれば、その法定相続分は2分の1ずつです。
養子だから相続分が少ないということはありませんし、反対に、婿養子として一家の跡継ぎとなるために相手方の家に入ったのだから実子よりも相続分が多いというようなことも無いわけです。
質問2について
妻の両親と養子縁組しても、実の父母についての相続権には何の影響もありません。つまり、婿養子に行った場合、実親と養親の双方について相続人となります。そして、相続分も実子と養子の間で違いはありません。
婿養子と、婿入りの違い
婿養子という言葉のほかに、「婿入りする」との表現が使われることがあります。
法律上の制度では無く正確な定義はありませんが、婿入りとは「妻の姓(名字)を名乗るが、妻の両親と養子縁組はしない」ことを指すことが多いようです。さらに、「婿に入る」と表現する以上は、結婚相手(妻となる人)と両親とが暮らしている家で同居することも含まれるでしょうか。
ただし、このような考え方をするのは、1947年(昭和22年)に民法が改正される前にあった「家」制度の名残です。現在は、結婚する際にどちらの家に入るかを決めるわけでは無く、どちらの姓(名字)を名乗るかを選択するだけです。嫁入りするか、婿入りするかを決めるわけでは無いのです。
したがって、「婿入り」したからといって、実の両親(父母)についての相続権が失われることもありません。というより、妻の姓を名乗ったからといって、家を継ぐ権利(相続権)が与えられるわけでもありません。妻の両親と養子縁組をしない限り、相続人となることは無いのです。
よって、妻の家の跡継ぎとして、○○家を継いで、お墓も守るというようなことであれば、たんに婿入りする(妻の姓を選択する)だけでなく、婿養子になる(妻の姓を名乗り、妻の両親と養子縁組する)のでなければ意味が無いともいえます。