平成27年2月27日から、商業登記規則(第61条第5項,第6項)の改正によって、取締役等の就任時に必要な添付書面が変更になっています。司法書士以外には不要な情報かとは思いますが、備忘録的に記事にします。
なお、この記事中で取締役等としたときは、「設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、監査役又は執行役」のことを指しています(商業登記規則第61条第5項より)。
1.設立登記、取締役等の就任(再任を除く)による変更登記
設立登記、取締役等の就任(再任を除く)による変更登記の際には、取締役等の就任承諾書に記載された氏名および住所と同一の氏名および住所が記載されている本人確認証明書を添付する必要があります。ただし、登記の申請書に当該取締役等の印鑑証明書(市区町村長が作成したもの)を添付する場合は、別に本人確認証明書を添付する必要はありません。
取締役等の「本人確認証明書」の例として、法務省民事局のWebサイトでは次のような記述があります(役員の登記の添付書面・役員欄の氏の記録が変わります)
・住民票記載事項証明書(住民票の写し)
個人番号が記載されていないものを使用してください。
・戸籍の附票
・住基カード(住所が記載されているもの)のコピー ※
・運転免許証等のコピー ※
(※裏面もコピーし,本人が「原本と相違がない。」と記載して,記名押印する必要があります。)
なお,市町村長から交付される個人番号の「通知カード」は,本人確認証明書として使用することはできません。
取締役等の就任承諾書には、氏名だけでなく住所の記載も必要であること、また、そこに記載された住所氏名が書かれた本人確認書類の添付も必要であるというわけです。
また、千葉地方法務局法人登記部門から、商業登記規則第61条第5項の取り扱いについて次のような通知があったので、参考までに掲載します。登記申請書に印鑑証明書を添付する場合であっても、就任承諾書への住所の記載が必要である旨が注意的に説明されています。
1 就任承諾書の住所の記載について
規則第61条第2項(第3項において読み替えて適用される場合を含む。以下同じ。)又は第4項の規定による取締役等の印鑑証明書を添付することにより,同条第5項ただし書の適用を受ける場合でも,当該取締役等の就任承諾書(株主総会議事録等の記載を援用する場合を含む。以下同じ。)には,当該取締役等の氏名のほか,住所の記載をも要する。2 本人確認証明書の添付について
取締役等に就任した外国在住の日本人の就任承諾書の署名について,当該取締役等の居住地を管轄する日本の領事が発行する署名証明書を添付する場合,当該署名証明書に当該取締役等の住所の記載がないときは,原則として,別途,取締役等の本人確認証明書の添付を要する。
なお,取締役等に就任した外国人の就任承諾書の署名について,当該取締役等の署名証明書を添付する場合も同様である。
2.代表取締役等(印鑑提出者)の辞任による変更登記
代表取締役等の辞任の登記を申請するときには、辞任届へ代表取締役等の個人実印で押印し、印鑑証明書(市区町村長作成の印鑑証明書)を添付する必要があります(ただし、辞任届に登記所への届出印で押印した場合には、印鑑証明書は不要です)。
改正の対象となるのは、代表取締役の辞任の登記の申請、代表取締役である取締役の辞任の登記の申請などですが、登記所に印鑑を提出している方が辞任する場合に限られます。
(参考)商業登記規則第61条
(平成29年2月6日 追記)
商業登記規則が一部改正され平成28年6月1日に施行されています。上記記事は改正前に書いたものですが、本人確認証明書など必要書類等については変更がありません。なお、改正後の商業登記規則61条は次の通りです。
商業登記規則第61条(添付書面)
定款の定め又は裁判所の許可がなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請については、申請書に、定款又は裁判所の許可書を添付しなければならない。
2 登記すべき事項につき次の各号に掲げる者全員の同意を要する場合には、申請書に、当該各号に定める事項を証する書面を添付しなければならない。
一 株主 株主全員の氏名又は名称及び住所並びに各株主が有する株式の数(種類株式発行会社にあつては、株式の種類及び種類ごとの数を含む。次項において同じ。)及び議決権の数
二 種類株主 当該種類株主全員の氏名又は名称及び住所並びに当該種類株主のそれぞれが有する当該種類の株式の数及び当該種類の株式に係る議決権の数
3 登記すべき事項につき株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合には、申請書に、総株主(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の総株主)の議決権(当該決議(会社法第三百十九条第一項 (同法第三百二十五条 において準用する場合を含む。)の規定により当該決議があつたものとみなされる場合を含む。)において行使することができるものに限る。以下この項において同じ。)の数に対するその有する議決権の数の割合が高いことにおいて上位となる株主であつて、次に掲げる人数のうちいずれか少ない人数の株主の氏名又は名称及び住所、当該株主のそれぞれが有する株式の数(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の数)及び議決権の数並びに当該株主のそれぞれが有する議決権に係る当該割合を証する書面を添付しなければならない。
一 十名
二 その有する議決権の数の割合を当該割合の多い順に順次加算し、その加算した割合が三分の二に達するまでの人数
4 設立(合併及び組織変更による設立を除く。)の登記の申請書には、設立時取締役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。取締役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書に添付すべき取締役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑についても、同様とする。
5 取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「設立時取締役」とあるのは「設立時代表取締役又は設立時代表執行役」と、同項後段中「取締役」とあるのは「代表取締役又は代表執行役」とする。
6 代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑
二 取締役の互選によつて代表取締役を定めた場合 取締役がその互選を証する書面に押印した印鑑
三 取締役会の決議によつて代表取締役又は代表執行役を選定した場合 出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑
7 設立の登記又は取締役、監査役若しくは執行役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書には、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、監査役又は執行役(以下この項において「取締役等」という。)が就任を承諾したことを証する書面に記載した氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該取締役等が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)を添付しなければならない。ただし、登記の申請書に第四項(第五項において読み替えて適用される場合を含む。)又は前項の規定により当該取締役等の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付する場合は、この限りでない。
8 代表取締役若しくは代表執行役又は取締役若しくは執行役(登記所に印鑑を提出した者に限る。以下この項において「代表取締役等」という。)の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役等が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
9 設立の登記又は資本金の額の増加若しくは減少による変更の登記の申請書には、資本金の額が会社法 及び会社計算規則 (平成十八年法務省令第十三号)の規定に従つて計上されたことを証する書面を添付しなければならない。
10 登記すべき事項につき会社に一定の分配可能額(会社法第四百六十一条第二項 に規定する分配可能額をいう。)又は欠損の額が存在することを要するときは、申請書にその事実を証する書面を添付しなければならない。
11 資本準備金の額の減少によつてする資本金の額の増加による変更の登記(会社法第四百四十八条第三項 に規定する場合に限る。)の申請書には、当該場合に該当することを証する書面を添付しなければならない。
下記は改正前の商業登記規則61条です。
商業登記規則第61条(添付書面)
定款の定め又は裁判所の許可がなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請については、申請書に、定款又は裁判所の許可書を添付しなければならない。
2 設立(合併及び組織変更による設立を除く。)の登記の申請書には、設立時取締役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付しなければならない。取締役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書に添付すべき取締役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑についても、同様とする。
3 取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「設立時取締役」とあるのは「設立時代表取締役又は設立時代表執行役」と、同項後段中「取締役」とあるのは「代表取締役又は代表執行役」とする。
4 代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合
議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑
二 取締役の互選によつて代表取締役を定めた場合
取締役がその互選を証する書面に押印した印鑑
三 取締役会の決議によつて代表取締役又は代表執行役を選定した場合
出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑
5 設立の登記又は取締役、監査役若しくは執行役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書には、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、監査役又は執行役(以下この項において「取締役等」という。)が就任を承諾したことを証する書面に記載した氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市区町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該取締役等が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)を添付しなければならない。ただし、登記の申請書に第2項(第3項において読み替えて適用される場合を含む。)又は前項の規定により当該取締役等の印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付する場合は、この限りでない。
6 代表取締役若しくは代表執行役又は取締役若しくは執行役(登記所に印鑑を提出した者に限る。以下この項において「代表取締役等」という。)の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役等が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市区町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。