遺言による相続登記の必要書類に関連する先例・質疑応答などを集めてみました(全文をそのまま掲載しているわけではなく、必要な箇所のみ要約等をおこなっています)。

司法書士高島一寛が自身で閲覧するために作成するものなので、参考にしていただくのは構いませんが、内容に誤りがあったとしても一切の責任を負いませんしご質問等も承っておりません。あくまでも自己責任でご利用ください。

千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)への相続登記(相続による不動産の名義変更)手続きのご依頼をお考えの方は、相続登記のページをご覧ください。


(最終更新日:2024年12月10日)

相続による所有権移転登記の申請書に添付する相続を証する書面として自筆証書又は秘密証書の遺言書は,家庭裁判所の検認を経たものであることを要する(登研505号215頁)。

自筆証書または秘密証書の遺言書については、家庭裁判所で検認を受ける必要がある。なお、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は検認不要。

「共同相続人中甲に相続させる。」との文言のある遺言書を添付して相続登記を申請する場合は,相続を証する書面として甲が相続人であることを明らかにする書面のみを添付すれば足りる(登研386号99頁)。

「何某に対し次の財産を相続させる」旨記載された遺言書による相続登記の申請書には,相続の開始があったことの証明及び相続分の指定を受けた者が相続開始時において適法な相続人であることの証明のために戸籍謄本又は除籍謄本の添付を要する(登研458号94頁)。

遺言による相続登記では、「相続の開始があったことの証明」及び「相続分の指定を受けた者が相続開始時において適法な相続人であることの証明」ができるだけの戸籍等があれば足りる。

よって、被相続人が親で相続人が子である場合は、被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本、相続人の戸籍謄本のみで足りることになる。

しかし、被相続人の兄弟姉妹へ相続させる遺言の場合、被相続人には相続人となる子(または代襲者)および直系尊属がいないことを証明するため、被相続人の出生から死亡に至るまで連続したすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本、被相続人の直系尊属の死亡記載のある除籍謄本等が必要になる。

特定の不動産を「遺贈する」旨の遺言書に,「この遺言の効力発生時において前記受遺者が遺言者の相続人であるときは,前項中『遺贈する』とあるのは,『相続させる』と読み替えるものとする」旨の記載がある場合,相続人となった当該受遺者は,相続を原因とする所有権の移転の登記を申請することができる(登研739号163頁)。

遺言公正証書には、上記のような記載があるものを見ることも多い。このような記載があれば、相続開始時に相続人となっている場合には、相続を原因とする所有権移転登記をすることが可能。

不動産を乙,丙に各2分の1ずつ相続させる旨遺言をした甲の死亡以前に既に丙が死亡していた場合,乙と丙の直系卑属丁を相続人として「相続」を登記原因とする甲名義の不動産の所有権移転登記申請は,受理されない(登研412号163頁)。

次のような予備的遺言をしておくことにより、上記のような場合に、相続を原因とする所有権移転登記をすることが可能となる。

第○条 遺言者は、前記○○が遺言者の死亡に先だって死亡し又は遺言者と同時に死亡した場合には、前条により同人に相続させるとした財産を、同人の長女○○(平成○年○月○日生))に相続させる。

遺言による所有権移転の登記原因は,遺言書の記載内容により遺贈又は相続とすべきである(登研369号82頁)。

共同相続人の各々に,相続財産の一部をそれぞれ贈与する旨の記載のある遺言書に基づく所有権移転の登記の登記原因は「遺贈」である(登研429号126頁)。

「私のすべての財産は妻に渡す」旨の記載のある遺言書による所有権移転の登記原因は,「遺贈」が相当である(登研512号158頁)。

令和5年4月1日からは、相続人に対する遺贈の場合には、相続登記と同様に受遺者である相続人の単独申請により遺贈登記をすることが可能となっている(令和5年4月1日より前に開始した相続により遺贈を受けたた相続人の場合も同様)。よって、現在では、相続人に対して「遺贈する」旨の遺言がされているような場合であっても、特段の問題が生じることはない。

被相続人の子が遺言書作成時及び相続開始時に生存している場合において,遺言書に「財産を孫に相続させる」という記載があるときは,その権利の移転の登記の登記原因は「遺贈」と解するのが相当である(登研480号131頁)。

上記の場合は、遺贈による所有権移転登記をすることになるので、受遺者である孫と、遺言執行者(または、相続人の全員)の共同申請による必要がある。

「長女甲に管理させる」旨の遺言書を添付した「相続」を原因とする所有権移転登記の申請は受理できない(登研612号191頁)。

「遺贈する」、「贈与する」、「相続させる」などの文言がなく「管理させる」のみでは、相続、遺贈のいずれによっても所有権移転登記をすることはできない。