遺産分割協議書が成立し、相続人中の1人が単独で不動産を相続するものとしました。遺産分割協議書を作成し、相続人全員による署名押印も済ませています。

ところが、相続登記をしないでいるうちに、不動産を取得するものとした相続人が死亡してしまった場合、どのような登記をすれば良いでしょうか?

遺産分割協議書への署名押印後に相続人が死亡

上図では、A名義の不動産をDが相続するとの遺産分割協議が成立しました。その後、相続登記をしないでいるうちに、Dが死亡しています。

この事例では、上記遺産分割協議についての遺産分割協議書及び相続人全員の印鑑証明書がある場合には、D名義への所有権移転登記を行うことができます。

遺産分割協議の当事者が死亡したとしても、その協議の効力が失われることはありません。また、遺産分割協議書に付ける印鑑証明書に期限はありませんから、すでにある遺産分割協議書(および印鑑証明書)により、相続登記が可能であるわけです。

この場合の相続登記では、死者名義への所有権移転登記を行うことになります。そのような登記が出来ることについては、次の質疑応答があります。

数次相続の開始の場合における中間の相続人のための相続登記の可否(登記研究209号)

問 登記簿上の所有者が甲であるが、甲が死亡して乙が相続し、さらに乙が死亡して丙丁戊が相続し、したがって、現在の相続人は丙、丁、戊でありますが、死亡者乙の相続による所有権移転の登記は、すべきでないとの説もありますが、乙がその不動産を生前第三者に売却している場合もありますので、死亡者乙のために相続による所有権移転の登記もできると思います。いかがでしょうか。

答 中間の相続人乙のために相続による所有権移転の登記をして差し支えないものと考えます(乙の死亡又は生存にかかわらず、また乙が生前売却していると否とにかかわりません。)。

相続人の相続人へ直接、移転登記が出来るか(数次相続)

上記のとおり、既に亡くなっているD名義への相続登記をする方法の他、被相続人Dの相続人全員による遺産分割協議が成立している場合には、AからDの相続人に対して直接移転登記を行うことも可能だと考えられます。

本例でいえば、Aから甲に対しての所有権移転登記が行えるわけです。この場合の登記申請書の記載は次のようになります。

登記申請書

登記の目的  所有権移転
原   因  平成○年○月○日D相続、平成○年○月○日相続
相 続 人  (被相続人 A)
       東京都豊島区東池袋一丁目○番○号
       甲
(以下省略)

登記原因の日付は「平成○年○月○日(Aの死亡日)D相続、平成○年○月○日(Dの死亡日)相続」となります。また、被相続人に書くべきは、登記簿上の所有権名義人です。

この登記をする際には、被相続人Aについての遺産分割協議書、および被相続人Dについての遺産分割協議書の両方がの添付書類となります。

遺産分割協議書を新たに作成する場合

なお、本例のような相続関係では、被相続人Aについての遺産分割協議が整っていたとしても、実際に遺産分割協議書を作成し、それを相続人が保有しているケースは少ないかもしれません。

そのため、被相続人Aについての遺産分割協議(第1次相続)、および被相続人Dについての遺産分割協議(第2次相続)を併せて記載した遺産分割協議書を新たに作成し、そこにA、Dの相続人全員が署名押印することで相続登記手続きをしている場合が多いと思われます。

けれども、第1次相続についての遺産分割協議書および印鑑証明書があるならば、それを使うことで、Aの相続人から手続きに協力をして貰わなくて済むわけです(ただし、実際に登記をする際には、事前にその不動産を管轄する法務局へ相談することをお勧めします)。

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