この記事は、条件付所有権移転仮登記抹消の登記について、当事務所で実際に取り扱ったケースをもとに書いたものです。参考にしていただくのは差し支えありませんが、内容の正確性については一切の責任を負いかねます。
千葉県松戸市の高島司法書士事務所(松戸駅東口徒歩1分)では、条件付所有権移転仮登記抹消やその他の不動産登記手続きについてのご相談を承っています。ご相談は予約制なので、ご相談予約・お問い合わせのページをご覧になって事前にご連絡くださいますようお願いいたします。
混同による条件付所有権移転仮登記抹消の登記
農地法5条の許可を条件として仮登記をした後、仮登記の本登記をすることなく、新たに所有権移転登記をしました。この時点で、仮登記(条件付所有権移転仮登記)を抹消しないまま、さらに売買による所有権移転登記がされています。
この場合に、登記が残ったままの「条件付所有権移転仮登記」を抹消するにはどのようにすればよいでしょうか。なお、ここでご紹介するのは実例に基づいてはいますが、実際に手続きをする際には、事前に法務局で確認をするようにしてください。
上の図は、登記事項証明書の一部(甲区)ですが、これを例にして解説をおこないます。
昭和40年に登記をしたときには、この土地の地目は農地でした。そのため、農地法による許可を条件とする、条件付所有権移転仮登記をしたわけです。しかし、その後に宅地へ地目変更されたことなどにより許可が不要になりました。そこで、条件が成就したことによる仮登記の本登記をするのではなく、新たに売買を原因とする所有権移転登記をしたのだと思われます。
この場合、条件付所有権は、仮登記権利者が所有権を取得したことにより混同により消滅すると考えられます。そこで、「混同」を原因として仮登記の抹消をすべきですが、この場合の登記申請は誰がおこなうのでしょうか。
まず、混同を原因とする仮登記抹消をする場合には、現在の所有権登記名義人(流山二男)と仮登記権利者(松戸花子)との共同申請で行います(登研508号)。または、仮登記権利者の承諾書があれば、現在の所有権登記名義人が単独で申請できると思われます。
仮登記権利者が登記申請に協力せず、承諾書をもらうこともできない場合には、「当該登記名義人に対抗することができる裁判があったことを証する情報」を添付します(不動産登記令別表70項)。
具体的には、仮登記名義人を被告として、「○○地方法務局○○支局昭和40年○月○日受付第○○○○○号の条件付所有権移転仮登記の昭和45年○月○日に混同が生じたことによる抹消登記手続をせよ。」というような判決を得ることにより単独で抹消登記申請ができるわけです。
登記完了後の登記事項証明書の記載は次のようになります。順位番号2番の条件付所有権移転仮登記に下線が引かれることで抹消されているのが確認できます。また、余白と書かれていたのが、「余白抹消」に変わっています。
・混同を原因とする条件付所有権移転仮登記の抹消の記載例(参考)
なお、条件付所有権移転仮登記の抹消については、条件付所有権移転仮登記の抹消(混同、錯誤)でも書いていますので、必要に応じてご覧ください。