特例有限会社、株式会社のいずれについても、役員は取締役1名のみという会社が多くなっています。その1名しかいない取締役が死亡した場合の、後任の取締役を選任し、役員変更登記をおこなう際の手続きについて備忘録的に記します。
実際に登記申請をおこなったケースをもとに書いていますが、実務の参考にする際は自己責任でお願いします。また、役員変更登記は個々のケースに応じて検討すべきことも多いので、ご自身の会社についての手続きをおこなう際には、司法書士に相談することをお勧めします。
取締役の死亡に伴う後任者の選任
臨時株主総会において後任者となる取締役の選任をします。臨時株主総会の議長については、唯一の取締役が死亡しているため、通常は議長となるはずの社長がいません。
そこで、定款に「議長となるべき者に事故がある場合」についての規定があればそれにしたがいますが、1人しか取締役がいない会社であるのに、社長以外の者が議長となる場合の「あらかじめ定めた順序」など存在しないのが通常だと思われます。
回りくどい言い方になりましたが、結論としては、定款の定めによって就任すべき議長がいない場合には、株主総会で議長を選任します。今回のケースでいえば、新たに取締役に選任される予定の人が議長に選任されるのでもよいわけです。
なお、今回のケースは、死亡した取締役のみが株主であって、その相続人が後任の取締役になる場合です。
臨時株主総会議事録への押印
新任取締役への選任予定者が議長兼議事録作成者になったとすれば、臨時株主総会議事録への押印も新任取締役が議長兼議事録作成者としておこなうことになります。
前任の取締役(社長)は死亡していますから、新任取締役の他には株主総会議事録へ押印すべき人は存在しないわけです。
なお、商業登記規則61条6項では、株主総会の決議によって代表取締役を定めた場合に、議長及び出席した取締役が株主総会に押印した印鑑について、市町村長の作成した証明書を添付するとされていますが、今回のケースのように会社を代表する取締役を選任する場合についても、臨時株主総会に押すべき印鑑は新任取締役の個人実印です。
特例有限会社の場合には、「株主総会の決議によって取締役を定めた場合」とする規定はないとしても、変更前の(代表)取締役が株主総会に出席し、登記所に提出した印鑑を議事録に押すことは不可能なことからも、臨時株主総会に押すべき印鑑は新任取締役の個人実印であるとの結論になるでしょう。