株式会社の設立登記申請の際に添付する「払込みがあったことを証する書面」の払込みの時期について、従来よりも柔軟な取扱いがなされることとなりました。

なお、司法書士に株式会社設立登記の依頼をする場合は、司法書士が手続きの流れについてご説明しますから、今回の変更についてご依頼者自身がが意識する必要はとくにありません。これ以降は、必要に応じて興味のある方だけお読みください。

また、松戸駅徒歩1分の高島司法書士事務所(千葉・松戸市)へのご依頼については、株式会社設立登記のページをご覧ください。

払込みがあったことを証する書面

株式会社を設立するの際の出資の履行について、会社法34条本文で「発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない」と定められています。

そして、この「出資に係る金銭の全額を払い込み」をする時期については、次のとおりとなっています。

まず、「払込金額についての定めがある定款」が作成されている場合、または、「発起人全員の同意により出資のための払込金額が決定」されている場合には、発起人が払い込むべき金額が確定しているといえます。

よって、上記の定款、または発起人決定書の作成後に、発起人による入金がおこなわれているのであれば、その入金日が定款認証日より前であっても「払込みがあったことを証する書面」とすることが認められていました。

そこで、当事務所へ株式会社設立登記のご依頼をいただいた場合についても、ご依頼者との間で、定款やその他の必要書類作成、出資金の払い込みなどを事前に済ませておき、後は司法書士が代理人として公証役場での定款認証、法務局への登記申請をおこなうこともありました。

このようにすることで、定款認証の後に出資金の払い込みをおこない、記帳した通帳を持参していただくというような手間を省くことができるわけです。

それが、今回の法務省民事局からの通知(株式会社の発起設立の登記の申請書に添付すべき会社法第34 条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面の払込みの時期について)により、上記の定款作成または発起人全員の同意より前に払込みがあった場合であっても、当該設立に際して出資されたものと認められるものであれば差し支えないとされたのです。

実際に株式会社設立手続きをおこなう際、これまでと大きな違いはないものの、発起人の銀行口座への入金日(または振込日)に神経質になる必要がなくなったという点において歓迎すべき変更でしょう。

※以下は全て今回の投稿に関連する箇所のみの抜粋です。

株式会社の発起設立の登記の申請書に添付すべき会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面の払込みの時期について(令和4年6月13日法務省民商第286号通知)

預金通帳の写し又は取引明細表その他払込取扱機関が作成した書面に記載された払込みの時期については、設立時発行株式に関する事項が定められている定款(商業登記法第47条第2項第1号)の作成日又は発起人全員の同意があったことを証する書面(同条第3項)に記載されているその同意があった日後に払込みがあった場合はもとより、その前に払込みがあった場合であっても、発起人又は設立時取締役(発起人からの受領権限の委任がある場合に限る(平成29年3月17日付け法務省民商第41号民事局長通達参照)。)の口座に払い込まれているなど当該設立に際して出資されたものと認められるものであれば、差し支えない。


会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて(平成18年3月31日付け法務省民商第782号民事局長通達)
第2部 株式会社
第1 設立
2 設立の登記の手続
(3) 添付書面
オ 会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面
(イ)設立時代表取締役又は設立時代表執行役の作成に係る払込取扱機関に払い込まれた金額を証明する書面に次の書面のいずれかを合てつしたもの
a 払込取扱機関における口座の預金通帳の写し
b 取引明細表その他の払込取扱機関が作成した書面


株式会社の発起設立の登記の申請書に添付すべき会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面の一部として払込取扱機関における口座の預金通帳の写しを添付する場合における当該預金通帳の口座名義人の範囲について(平成29年3月17日付け法務省民商第41号法務局長通達)

預金通帳の口座名義人として認められる者の範囲
預金通帳の口座名義人は、発起人のほか、設立時取締役(設立時代表取締役である者を含む。以下同じ。)であっても差し支えない。
 払込みがあったことを証する書面として、設立時取締役が口座名義人である預金通帳の写しを合てつしたものが添付されている場合には、発起人が当該設立時取締役に対して払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面を併せて添付することを要する。