(最終更新日:2025年6月11日)

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1.遺産分割協議書に添付する成年後見人の印鑑証明書

2.成年後見人の登記事項証明書の期限

1.遺産分割協議書に添付する成年後見人の印鑑証明書

遺産分割協議による相続登記をするとき、相続人中に成年後見人が選任されている人がいる場合、遺産分割協議書には成年後見人が署名押印し、印鑑証明書も成年後見人のものを添付する。

このとき添付する印鑑証明書として、裁判所書記官が作成した印鑑証明書を使用することができる。

司法書士や弁護士が成年後見人に選任されている場合、成年後見登記の登記事項証明書には、成年後見人の住所として事務所所在地が記載されている。

裁判所書記官が作成する印鑑証明書には、成年後見人の住所として登記された住所(事務所所在地)が記載されているので、相続登記の際には、この印鑑証明書と成年後見人の登記事項証明書を添付すれば足りることになる。

なお、市区町村長発行の印鑑証明書を添付しようとする場合には、成年後見人事務所所在地と個人住所との両方が載っている証明書(弁護士会発行の弁護士登録証明書など)が必要となる。

また、弁護士会が発行する印鑑登録証明書や、司法書士会が発行する職印証明書は、相続登記のための遺産分割協議書に添付する印鑑証明書とすることはできない。


不動産登記令第16条において、申請情報を記載した書面へ記名押印する申請人等の印鑑証明書についての定めがある。

また、不動産登記規則第48条では、裁判所書記官が作成する印鑑証明書を添付する場合、市町村長の作成する印鑑証明書の添付は不要だとしている。

遺産分割協議書に添付する印鑑証明書は、登記原因証明情報の一部となるものなので、これとは異なるはずだが、裁判所書記官が作成する印鑑証明書は使用できるものの、弁護士会や司法書士会の発行によるものは使用できないものとして登記申請をおこなっている。

裁判所書記官が作成した不在者財産管理人、相続財産管理人及び成年後見人の印鑑に関する証明書は、不動産登記規則第48条第1項第3号に規定する印鑑証明書として取り扱って差し支えない。この裁判所書記官が作成した印鑑に関する証明書は、作成後3月以内(不動産登記令第16条第3項)である必要はない(登研815条171頁)。

不動産登記規則第48条(申請書に印鑑証明書の添付を要しない場合)

令第16条第2項の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。

(一、二 省略)

三 裁判所によって選任された者がその職務上行う申請の申請書に押印した印鑑に関する証明書であって、裁判所書記官が最高裁判所規則で定めるところにより作成したものが添付されている場合

不動産登記令第16条(申請情報を記載した書面への記名押印等)

 申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務省令で定める場合を除き、申請情報を記載した書面に記名押印しなければならない。

2 前項の場合において、申請情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書(住所地の市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、市長又は区長若しくは総合区長とする。次条第一項において同じ。)又は登記官が作成するものに限る。以下同じ。)を添付しなければならない。

3 前項の印鑑に関する証明書は、作成後三月以内のものでなければならない。

(4、5 省略)

2.成年後見人の登記事項証明書の期限

成年後見人の代理権限証明情報として添付する登記事項証明書は、不動産登記令7条1項2号、同17条1項により、作成後3ヶ月のものでなければならない。

第7条 登記の申請をする場合には、次に掲げる情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。

一 (省略)

二 代理人によって登記を申請するとき(法務省令で定める場合を除く。)は、当該代理人の権限を証する情報

第17条 第7条第1項第1号ロ又は第2号に掲げる情報を記載した書面であって、市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成したものは、作成後3月以内のものでなければならない。

ところで、遺産分割協議書に成年後見人が参加している場合には、相続登記の申請をする際に後見登記事項証明書を添付することになるが、これは登記原因証明情報の一部であり、代理権限証明情報として添付するものではない。

そこで、成年後見人が不動産を取得しない(申請人とならない)相続登記の申請の際に添付する後見登記事項証明書については、発行後の3ヶ月以内のものであっても使用できるのだろうか。

通常は発行後3ヶ月以内の後見登記事項証明書を添付するので問題ないだろうが、たとえば次のようなケース。

成年後見人の参加による遺産分割協議が成立し、遺産分割協議書を作成したものの、相続登記をしないでいるうちに数年が経過。その間に、成年被後見人の死亡により後見が終了している。

この場合に、遺産分割協議書に添付する印鑑証明書および弁護士登録証明書などについては期限の定めはないとして、後見の登記事項証明書も当時のものを使用することができるのか。

以前に取り扱った件では、成年後見人であった弁護士に新たに「閉鎖登記事項証明書」を取得してもらい、それ以外は既にある遺産分割協議書、印鑑証明書などにより相続登記の申請をすることにした。

代理権限証明情報として添付するのではないから、作成後3ヶ月を経過している後見登記事項証明書でも使用できそうだが、このときは確実に登記が通ることを優先した次第。

なお、後見の閉鎖登記事項証明書には、後見開始の裁判の確定日、成年後見人の死亡による終了日が記載されているので、遺産分割協議のときに成年後見人であったことが証明できる。

当時の後見登記事項証明書では、遺産分割協議の時点で成年後見人であったことは明らかにならないが、そこまでの証明はそもそも求められていないので、いつ発行された登記事項証明書でも問題ないか。

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