(最終更新日:2025年5月29日)
このページは司法書士高島一寛(千葉県松戸市松戸1176-2)が自身の業務のための備忘録として作成するものです。参考にしていただくのは差し支えありませんが、内容に誤りがあったとしても一切の責任を負いませんしご質問なども承っておりません。あくまでも自己責任でご利用ください。
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登記名義人住所変更の要否(省略できる場合など)
行政区画またはその名称の変更があった場合、登記名義人住所変更の登記は不要。字またはその名称に変更があったときも同様。
不動産登記規則 第92条(行政区画の変更等)
行政区画又はその名称の変更があった場合には、登記記録に記録した行政区画又はその名称について変更の登記があったものとみなす。字又はその名称に変更があったときも、同様とする。
2 登記官は、前項の場合には、速やかに、表題部に記録した行政区画若しくは字又はこれらの名称を変更しなければならない。
登記名義人住所変更の登記が省略できるのは、「行政区画又はその名称」、「字又はその名称」が変更となった場合なので、行政区画の変更に伴い「町名及び地番が変更」となったときには、登記名義人住所変更の登記が必要。
これが、町名変更のみであり、地番が変更されないならば、登記名義人住所変更の登記は不要であるということ。
政令指定都市の区制施行に伴い登記名義人表示中住所につき変更を生じた場合においては、右変更の登記をすることなく、他の登記を申請することができる(登研301号69頁)。
地方自治法第8条の規定により村から町へ変更された場合、所有権登記名義人たる村の登記名義人表示変更の登記をしなくても、登記義務者として所有権移転の登記を嘱託することができる(登研489号152頁)。
ただし、上記の不動産登記規則第92条は「第二節 表示に関する登記」の「第一款 通則」に置かれており、権利に関する登記についての規定ではないことに注意。
旧不動産登記法59条には次のとおり、現在の不動産登記規則第92条第1項と同様の規定があったが、現行法では表示の登記についての規定となっている。
行政区画又はその名称の変更ありたるときは登記簿に記載したる行政区画又はその名称は当然これを変更したるものとみなす。字又はその名称の変更ありたるときまた同じ。
結論としては、行政区画又はその名称の変更があった場合でも、所有権移転登記や抵当権設定登記をする際に、その前提としての所有権登記名義人住所変更の登記は省略できるとしても、その根拠は定かでない。
たとえば、「改訂 登記名義人の住所氏名変更・更正登記(新日本法規)」では、不動産登記規則第92条をそのまま根拠としているように読めるが、この規定は権利の登記には適用されないというのが通説のようである。
なお、「不動産登記申請マニュアル(新日本法規)」には、行政区画の変更は、住居表示の実施、地番変更を伴う町名変更等と異なり公知の事実であるから、不動産登記法25条7号の却下事由である「申請情報の内容である登記義務者の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と合致しないとき」には該当しないというな解説がある。
大字表記の廃止(参考)
新潟県三条市のウェブサイトに大字表記の廃止のページがある。これによれば、三条市全域で平成20年1月1日から大字表記が廃止された。具体的には住所が次の通り変更となっている。
・住所の表示 三条市大字帯織○○番地 ⇒ 三条市帯織○○番地
不動産登記については、下記の通り解説がある。
不動産登記簿に登記された所有者、抵当権者及び仮登記権利者等の住所変更(甲区、乙区)について、住所変更の手続きは必要ありませんが、住所変更を希望される場合は、大字表記廃止証明書を添えて、登記名義人住所変更登記を法務局へ申請してください。登記免許税は非課税(無料)です。
根拠となる規定等については書かれていないが、大字の表記廃止は、不動産登記規則第92条第1項の後段にある、「字又はその名称に変更があったとき」に該当するということか。
いずれにしても、「大字」が取れただけであれば、登記名義人住所変更が不要であるのは当然であろう。
関連情報
複数の土地についての登記名義人住所変更の登記をする際に、同一申請書による一括申請ができるのか。
添付情報の提供方法に関する特例(不動産登記令附則5条)により不動産登記のオンライン申請をする際は、申請情報と併せて登記原因証明情報のPDFファイル(当該書面に記載された情報を記録した電磁的記録)を提供しなければならないとされているが、登記名義人住所変更の登記をするときには住民票の写し等のPDFファイルを添付しなくてよい。