司法書士事務所のなかには、コロナ禍の影響により売上が減少しているところもあるでしょう。

本日の報道では、現在21都道府県に出されている緊急事態宣言が、東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏4都県については、9月12日までの期限を延長する方向で調整に入っているとのことです。

いつになったら新型コロナが収束し、以前のような日常生活を取り戻すことができるのかは現時点で全く分からないような状況です。

そんな先の見えないときに持ち出す話題ではないかもしれませんが、全国の司法書士数と不動産登記件数の推移を見て、今さらながら衝撃を受けております。

なお、以下の数字はすべて「司法書士白書 2021年版」によります。

まず、全国の司法書士数は平成11年4月1日の16,983人から平成31年4月1日の22,632人へと約33.3%増加しています。

そして、司法書士数が増えているのに対して、不動産登記の件数は大幅に減っています。

不動産の権利に関する登記事件数(土地、建物の合計)は次の通りとなっており、それぞれ3年間の平均件数で比較すると実に34.4%も減少しています。

・平成9年 12,973,298件
・平成10年 12,110,608件
・平成11年 12,015,873件
(1)上記3年間の平均件数 12,366,593件

・平成29年 8,296,286件
・平成30年 8,004,543件
・令和元年 8,036,297件
(2)上記3年間の平均件数 8,112,375件

さらに司法書士1人あたりの件数で比較してみると、驚くべき事実が明らかになりました。

(1)12,366,593件 ÷ 16,983人 = 約728件
(2)8,112,375 ÷ 22,632人 = 約358件

平成9年から11年の平均件数を平成11年4月1日の司法書士数で割ってみると1人あたりの件数は約728件だったのが、平成29年から令和3年のを同様に計算すると約358件となり、司法書士1人あたりの件数が半分以下になっていることが分かります。

この20年ほどの間に、司法書士報酬の相場が大幅に上昇したというようなことはないはずなので、単純にいえば司法書士1人あたりの売上高が半減していることになります。

もちろん、司法書士の仕事は不動産登記だけではないものの、売上の大半を不動産登記が占めている司法書士が多いはずです。

不動産登記からの売上が半減したのを補えるほどの新規業務などなかなか見つからないでしょうから、司法書士1人あたりの売上はやはり減っているのだと考えるのが自然でしょう。

ただ、この20年ほどの間に、独立開業せずいわゆる勤務司法書士として働く人が増えていることで、経営者である司法書士の売上についてはそこまで減少していないのかもしれません。

いずれにしても、司法書士全体としての市場規模が縮小していることに変わりはないわけですが。

ところで、私自身の話をすれば、開業当初は債務整理関連の業務が多かったのが、現在では相続やその他の不動産登記業務の取扱件数が多くなっています。

債務整理業務が減少したのは、貸金業法の改正により多重債務者が多少なりとも減ったことに加え、債務整理を取り扱う弁護士(法律事務所)が増えたことが要因だと思われます。

当事務所が開業した2002年頃は、ホームページを開設して債務整理の相談を受け付ける法律事務所などほとんど存在しませんでした。

その後、いわゆる過払いバブルの時代などを経て、今では弁護士がホームページにより債務整理の無料相談を受けるのも当たり前になっています。

そんな状況の変化を受けて、現在では当事務所の債務整理(任意整理、個人再生、自己破産)の取扱件数はごく僅かとなっています。

債務整理関連のキーワードについてのSEO対策を真剣におこなえば状況は変わるのかもしれませんが、積極的に債務整理業務に取り込んでいこうとは考えていないので、このままご依頼が増えることはないでしょう。

一方で相続関連のご依頼が増えたのも、相続に関連するコンテンツを充実させ、SEO対策に取り組んできた成果です。相続登記などのキーワードにより検索上位に入るようになれば、それに比例してご相談も増えてきます。

ただし、当事務所が相続関連業務に注力するようになってから、すでに何年もの時が経過しています。

今からSEOに取り組もうとする方が相続関連業務をターゲットにしたいと考えたとしても、先行している同業者のウェブサイトが星の数ほどあるといった状況だといえます。

そこに割って入るのか、それとも別の分野で先行しようと考えるのか。どちらを選んでも容易な道ではないかもしれませんが、司法書士がネットで集客しようとするならば、そこで勝ち残っていくしかないわけです。