離婚協議において合意した事項については、合意書(離婚協議書)などの書面にしておくことで、協議内容に争いが生じた場合の証拠となります。また、離婚協議書を公正証書(離婚給付契約公正証書)により作成すれば、養育費、慰謝料、財産分与等の金銭の支払いを怠ったときに強制執行をすることができます。
このページでは、離婚協議において合意した事項をどのように離婚協議書に記載するのか、基本的な条項例を示しています。
離婚協議書の作成(条項例)
1.養育費
2.慰謝料
3.財産分与
4.年金分割
5.面会交流
6.強制執行認諾文言(公正証書の場合)
1.養育費
1-1.子が成人するまで毎月一定額を支払うものとする場合
第○条 甲は、乙に対し、丙の養育費として、平成○年○月から丙が20歳に達する日の属する月まで、毎月金○万円を、毎月末日限り、乙が指定する銀行口座(○○銀行○○支店 普通預金口座 口座番号1234567 口座名義乙)に振り込む方法により支払う。
1-2.子が大学を卒業するまで毎月一定額を支払うものとする場合
第○条 甲は、乙に対し、丙の養育費として、平成○年○月から平成○年3月まで、毎月金○万円を、毎月末日限り、乙が指定する銀行口座(○○銀行○○支店 普通預金口座 口座番号1234567 口座名義乙)に振り込む方法により支払う。
この条項では、子が大学を卒業するはずの年の3月まで養育費を支払うものとしています。子がまだ大学に進学していない時点で養育費を定める場合には、大学に進学する可能性やその他の事情を考慮して、養育費支払いの終期を決めることになるでしょう。
1-3.ボーナス月には加算して養育費を支払うものとする場合
第○条 甲は、乙に対し、丙の養育費として、平成○年○月から丙が20歳に達する日の属する月まで、毎月金○万円並びに7月及び12月には同金額に各金○万円を加算した額を、毎月末日限り、乙が指定する銀行口座(○○銀行○○支店 普通預金口座 口座番号1234567 口座名義乙)に振り込む方法により支払う。
公正証書により離婚協議書を作成するときは、養育費の支払いを怠ったときに強制執行ができるよう、「7月及び12月には金○万円を加算する」というように加算する月と金額を明確にしておく必要があります。たとえば、「ボーナス月には金○万円を加算する」というような書き方では、ボーナス月とは何月なのかが特定できません。
2.慰謝料
第○条 甲は、乙に対し、慰謝料として金200万円を支払う義務があることを認め、平成○年○月○日限り、乙が指定する銀行口座(○○銀行○○支店 普通預金口座 口座番号1234567 口座名義乙)に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
第○条 甲及び乙は、本件離婚に関し、本条項に定めるほか、何らの債権債務のないことを相互に確認し、今後、財産分与、慰謝料等名目如何にかかわらず互いに金銭その他一切の請求をしない。
この条項例は、支払期限までに一括払いする場合のものです。慰謝料の支払い義務者に資力がなく、一括払いが困難な場合には、分割払いの合意による定めをすることもあります。この場合、2回分の支払いを怠ったときには残金を一括して請求できるとするのが通常でしょう。そして、残金に年5%などの遅延損害金を付加して支払うものとするわけです。
3.財産分与
第○条 甲は、乙に対し、財産分与として金500万円を支払う義務があることを認め、平成○年○月○日限り、乙が指定する銀行口座(○○銀行○○支店 普通預金口座 口座番号1234567 口座名義乙)に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
第○条 甲及び乙は、本件離婚に関し、本条項に定めるほか、何らの債権債務のないことを相互に確認し、今後、財産分与、慰謝料等名目如何にかかわらず互いに金銭その他一切の請求をしない。
財産分与のほか、慰謝料についても取り決めをする場合、慰謝料と財産分与を別々に決めることもできますし、慰謝料的要素を含めて財産分与の額を決めることもできます。財産分与の中に慰謝料を含める場合、「慰謝料及び財産分与として金500万円を支払う義務があることを認め」というような条項になります。
4.年金分割
第○条 甲と乙との間の、年金分割のための情報通知書記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定める。
合意分割の請求手続きの際に相手方の協力が得られるのであれば、年金分割について離婚協議書で定めなくても差し支えありません。年金分割について公正証書に記載し、年金分割のための情報通知書を別紙として添付して、その按分割合を定めておけば夫婦であった者の一方により手続きをすることも可能です。
5.面会交流
第○条 乙は、甲が丙と毎月1回程度面会交流することを認める。面会の具体的な日時、場所、方法等については、丙の福祉を尊重しながら、甲乙が誠実に協議して決める。
毎月1回程度の面会交流を認めるとする場合の条項例です。必ず毎月1回と定めてしまうと、何からの事情で月1回の面会交流ができなかった場合に約束違反となってしまい、当事者にとって負担になったりトラブルが生じる恐れがあるので、月1回程度などとしておくのが妥当でしょう。
監護している親が、子と非監護親とが面会交流することに抵抗がないような場合には、上記のような面会交流の定めでも問題ないでしょう。しかし、監護親が面会交流に消極的で、合意した面会交流がおこなわれない恐れがあるときには、面会交流の回数及び日時(「毎月1回、第1日曜日の午前10時から午後5時」など)、場所、方法などを具体的に定めて置いた方がよいかもしれません。
6.強制執行認諾文言(公正証書の場合)
(強制執行)
第○条 甲は、本契約第○条及び第○条に定める金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。
養育費、慰謝料、財産分与など金銭の一定額の支払いを約束する場合、離婚協議書を公正証書にすることで、取り決め通りに支払いがおこなわれない場合に、公正証書に基づいて強制執行をすることができます。ただし、この公正証書には「債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述」が記載されていなければなりません。
民事執行法第22条(債務名義)
強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
(1~4の2号 省略)
5 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの
(以下 省略)
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