2.全ての債務支払いを免除されるのか(非免責債権)
3.必ず免責されるのか(免責不許可事由)
4.同時破産廃止手続とは
5.裁判所へは何回行くのか
6.どこの裁判所へ申立てをするのか(管轄裁判所)
7.住民票と現住所が違う場合の申立先は
8.自己破産申立を司法書士に依頼できるのか
1.どんな場合に自己破産申立をするのか(破産申立の基準)
自己破産は、破産法により定められた手続きであり、債務者が支払不能にあるときに、裁判所は破産手続を開始するとされています。
「支払い不能」であるかの基準としては、今月の返済ができないというだけでは無く、それ以降も継続して返済ができない状態を指します。また、その人が支払い不能であるかは、現時点での収入のみで無く、所有している財産の状況や今後の収入の見込みなどにより総合的に判断されます。
したがって、借金がいくら以上ある場合に自己破産するべきなどと一律に判断することはできません。借金の額が年収を大きく上回っている場合に、自己破産を選択するべきだといわれることもありますが、そのように一律の判断をするのも正しいとはいえません。
たとえば、借金の総額が100万円未満で年収には満たなかったとしても、高齢であったり病気や怪我のために今後の収入増が見込めないのであれば、自己破産をすることもあります。一方では、収入の総額が多い場合には、年収以上の借金があっても支払い不能にはあたらないと判断されることもあり得ます。
2.自己破産すれば全ての債務支払いを免除されるのか(非免責債権)
自己破産の申立は、破産手続の開始と免責の許可を求めておこなうものです。自己破産し、免責許可の決定を得ることによって、はじめて借金の支払い義務から解放されるのです。
ただし、免責許可決定を得られても支払い義務が無くならない債務もあります。これを非免責債権といいます。主な非免責債権は下記のとおりです。
- 租税等の請求権
- 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
- 次に掲げる義務に係る請求権
- 夫婦間の協力及び扶助の義務
- 婚姻から生ずる費用の分担の義務
- 子の監護に関する義務
- 直系血族及び兄弟姉妹についての扶養の義務
- 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
- 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
- 罰金等の請求権
上記のとおり、租税については自己破産し免責許可決定を得ても支払い義務は無くなりません。たとえば、所得税、住民税(市県民税)、固定資産税などの他、国民健康保険についても免責されません。
また、破産申立の際、債権者一覧に記載しなかった債権者に対する債務も免責されないので要注意です。
3.自己破産すれば必ず免責されるのか(免責不許可事由)
免責不許可事由(破産法252条)に該当する行為がある場合、自己破産申立をしても免責が許可されないことがあります。
免責不許可事由として問題になることが多い行為として、ギャンブル(パチンコ、競馬など)、浪費(ショッピング、飲食代)などがおもな借金の原因である場合が挙げられます。
最近では、クレジットカードで買った商品(乗車券・商品券など)をすぐに売却する換金行為が問題になることが多いです。クレジットカードのショッピング枠の現金化は、そもそもがカード規約違反であり、犯罪行為に該当する恐れもあります。さらに、免責不許可事由になる行為ですから絶対にすべきではありません。
また、過去に自己破産して免責許可決定が確定している場合、その確定の日から7年以内の免責許可申立は、免責不許可事由となります。個人民事再生のうち、給与所得者等再生を利用してその再生計画を遂行した場合、再生計画認可決定の確定日から7年以内の免責許可申立をした場合も同様です。
上記のような免責不許可事由がある場合には、免責許可決定が出ないのが原則なのですが、免責不許可事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができるとされています。
現実にも、多少の免責不許可事由に該当する行為があっても、免責が許可されているケースが多いです。たとえば、少しくらいギャンブルをしていたからといって、ただちに免責不許可になるわけではありません。また、免責不許可事由の内容や程度によっては、破産管財人による調査を経た上で免責許可決定がなされることもあります。
自己判断で破産申立をあきらめるのでは無く、まずは、専門家(弁護士、司法書士)に正直に話をして判断を受けるべきです。その上で、免責許可決定を得るのが難しそうな場合には、個人民事再生など他の債務整理手段を選ぶこともありますし、他に手段が無いと判断されるときには多少の困難を承知の上で自己破産申立をすることもあります。
4.自己破産の同時破産廃止手続とは?
自己破産申立をすると、本来であれば申立人(破産者)が持っている財産を、お金に換えて(換価して)債権者に配当します。これを破産手続といいます。しかし、破産者が持っている財産が、破産手続をするために破産管財人に支払う費用に足りない場合には、配当する財産が無いわけですから破産手続をする意味がありません。そこで、このようなときには破産手続を行わないこととしたのです。
これを、同時破産廃止手続きといいます。これは、破産手続を開始する(破産宣告を出す)のと同時に、「破産手続を廃止する」との決定を出すことです。破産手続を開始したのと同時に、破産手続を廃止してしまうのですから、つまり実際には破産手続を行わないことになります。
なお、同時破産廃止では無く「管財手続き」になるケースとして、破産者の持っている財産が概ね20万円を超える場合には、原則として破産管財人が選任されることになります。財産とは、不動産(オーバーローンの場合を除く)、生命保険の解約返戻金、退職金見込額(8分の1の額)、不当利得返還請求権(消費者金融などへの過払い金)などを主に指します。
また、上記のような財産が無い場合でも、免責不許可事由の存在が明らかである場合、裁量免責を受けるために、管財人による調査をするために管財手続きとされることもあります。
5.自己破産申立で裁判所へ何回行くのか
自己破産をする際には、裁判所へ最低2回行くことになります(同時破産廃止の場合)。
1回目は申立てのときで、「破産手続開始・免責許可申立書」とその他の必要書類を裁判所へ提出します。裁判所費用(予納金)の納付もこのときにおこないます。書類提出やその他の裁判所での手続きは司法書士がおこないますが、当事務所ではご依頼者にもご同行いただいています。
2回目は、裁判官との面接(破産審問期日)です。この破産審問期日は、自己破産申立の日から1ヶ月程度後になるのが通常です。面接といっても、事前に必要な書類をすべて提出し、文書によって事情説明などをおこなっていますから、当日になって難しいことを突然聞かれることはありません。
裁判官による面接自体の所要時間は、ほんの数分程度である場合がほとんどのようです。当事務所では数多くの自己破産申立をおこなってきましたが、破産審問期日でうまく受け答えができなかったから手続きに失敗したなどということはありません。
6.自己破産申立はどこの裁判所へするのか(管轄裁判所)
自己破産の申立は、申立人(債務者)の住所を管轄する地方裁判所へおこないます(ただし、営業所を有する営業者(個人事業主)の場合については、その主たる営業所の所在地に破産申立をするとされています)。
たとえば、高島司法書士事務所の最寄りである千葉地方裁判所松戸支部へ申立するのは、松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市に住所がある方です。
ご参考までに当事務所の周辺地域についての管轄裁判所は次のとおりです。その他の裁判所の管轄は裁判所ホームページの、裁判所の管轄区域でご覧になれます。
申立人(債務者)の住所地 | 管轄裁判所 | |
---|---|---|
東京都 | 東京都の特別区(23区) | 東京地方裁判所 |
千葉県 | 松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市 | 千葉地方裁判所松戸支部 |
千葉市、習志野市、市原市、八千代市、市川市、 船橋市、浦安市 |
千葉地方裁判所(本庁) | |
茨城県 | 龍ケ崎市、牛久市、取手市、守谷市、稲敷市、 稲敷郡河内町、北相馬郡利根町 |
水戸地方裁判所龍ヶ崎支部 |
土浦市、つくば市、つくばみらい市、 かすみがうら市、稲敷郡阿見町・美浦村、石岡市、 小美玉市のうち旧新治郡玉里村 |
水戸地方裁判所土浦支部 | |
埼玉県 | 越谷市、春日部市、草加市、八潮市、三郷市、吉川市、 杉戸町、松伏町 |
さいたま地方裁判所越谷支部 |
7.住民票と現住所が違う場合の申立先は
住民票の住所と、実際に住んでいる場所が違う場合には、現在、住んでいるところが住所であるとされます。よって、住民票の住所ではなく、実際に住んでいる場所の管轄裁判所に申立をします。
たとえば、東京都内に住民票がある方が、現在は千葉県柏市に住んでいるとすれば、柏市の管轄裁判所である千葉地方裁判所松戸支部に自己破産申立をするわけです。
債権者からの取り立てなどを恐れて、住民票を移さないままにされている方もいらっしゃいます。そのよう場合、必ずしも自己破産をする前に住民票を移す必要はありません。自己破産申立てをして免責許可決定が確定した後に、住民票を移しても差し支えありませんからご安心ください。
8.自己破産申立を司法書士に依頼できるのか
裁判所提出書類の作成は司法書士の主要な業務の一つですから、もちろん、自己破産申立を司法書士にご依頼いただけます。
裁判所への破産申立書などの提出も司法書士がおこなえますし、その後の、裁判所からの電話連絡や郵便物も司法書士宛てに来ることになります。よって、司法書士に破産申立書の作成を依頼すれば、ご自分で対応しなければならないのは、破産審問期日(裁判官による面接)時の1回のみであるのが通常です。
ただし、債権者に受任通知を送ることができるのは認定司法書士に限られますので、司法書士への依頼後すぐに督促をストップさせるためにも、認定司法書士に依頼するのが安心です。認定司法書士とは、簡易裁判所における訴訟代理について法務大臣の認定を受けた司法書士のことをいいます。
当事務所ももちろん認定司法書士事務所で、2002年(平成14年)2月の開業当初から自己破産申立を積極的に取り扱っており、認定司法書士の中でも豊富な経験と実績を有しています。とくに、千葉地方裁判所松戸支部に対して多数の自己破産申立てをおこなっております(千葉地方裁判所松戸支部の管轄区域は、松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市です)。
なお、弁護士、司法書士以外の者が、自己破産申立の業務を取り扱うことは法律で禁止されています。自己破産申立など債務整理のご相談、ご依頼をする際は、弁護士または司法書士の事務所であることをご確認ください。