2.自己破産すれば全ての債務支払いを免除されるのか(非免責債権)
13.退職金がある場合
15.自動車がある場合
17.債権者名簿の作成について
自己破産は、破産法により定められた手続きであり、債務者が支払不能にあるときに、裁判所は破産手続を開始するとされています。
「支払い不能」であるかの基準としては、今月の返済ができないというだけでは無く、それ以降も継続して返済ができない状態を指します。また、その人が支払い不能であるかは、現時点での収入のみで無く、所有している財産の状況や今後の収入の見込みなどにより総合的に判断されます。
したがって、借金がいくら以上ある場合に自己破産するべきなどと一律に判断することはできません。借金の額が年収を大きく上回っている場合に、自己破産を選択するべきだといわれることもありますが、そのように一律の判断をするのも正しいとはいえません。
たとえば、借金の総額が100万円未満で年収には満たなかったとしても、高齢であったり病気や怪我のために今後の収入増が見込めないのであれば、自己破産をすることもあります。一方では、収入の総額が多い場合には、年収以上の借金があっても支払い不能にはあたらないと判断されることもあり得ます。
自己破産の申立は、破産手続の開始と免責の許可を求めておこなうものです。自己破産し、免責許可の決定を得ることによって、はじめて借金の支払い義務から解放されるのです。
ただし、免責許可決定を得られても支払い義務が無くならない債務もあります。これを非免責債権といいます。主な非免責債権は下記のとおりです。
上記のとおり、租税については自己破産し免責許可決定を得ても支払い義務は無くなりません。たとえば、所得税、住民税(市県民税)、固定資産税などの他、国民健康保険についても免責されません。
また、破産申立の際、債権者一覧に記載しなかった債権者に対する債務も免責されないので要注意です。
免責不許可事由(破産法252条)に該当する行為がある場合、自己破産申立をしても免責が許可されないことがあります。
免責不許可事由として問題になることが多い行為として、ギャンブル(パチンコ、競馬など)、浪費(ショッピング、飲食代)などがおもな借金の原因である場合が挙げられます。
最近では、クレジットカードで買った商品(乗車券・商品券など)をすぐに売却する換金行為が問題になることが多いです。クレジットカードのショッピング枠の現金化は、そもそもがカード規約違反であり、犯罪行為に該当する恐れもあります。さらに、免責不許可事由になる行為ですから絶対にすべきではありません。
また、過去に自己破産して免責許可決定が確定している場合、その確定の日から7年以内の免責許可申立は、免責不許可事由となります。個人民事再生のうち、給与所得者等再生を利用してその再生計画を遂行した場合、再生計画認可決定の確定日から7年以内の免責許可申立をした場合も同様です。
上記のような免責不許可事由がある場合には、免責許可決定が出ないのが原則なのですが、免責不許可事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができるとされています。
現実にも、多少の免責不許可事由に該当する行為があっても、免責が許可されているケースが多いです。たとえば、少しくらいギャンブルをしていたからといって、ただちに免責不許可になるわけではありません。また、免責不許可事由の内容や程度によっては、破産管財人による調査を経た上で免責許可決定がなされることもあります。
自己判断で破産申立をあきらめるのでは無く、まずは、専門家(弁護士、司法書士)に正直に話をして判断を受けるべきです。その上で、免責許可決定を得るのが難しそうな場合には、個人民事再生など他の債務整理手段を選ぶこともありますし、他に手段が無いと判断されるときには多少の困難を承知の上で自己破産申立をすることもあります。
自己破産申立をすると、本来であれば申立人(破産者)が持っている財産を、お金に換えて(換価して)債権者に配当します。これを破産手続といいます。しかし、破産者が持っている財産が、破産手続をするために破産管財人に支払う費用に足りない場合には、配当する財産が無いわけですから破産手続をする意味がありません。そこで、このようなときには破産手続を行わないこととしたのです。
これを、同時破産廃止手続きといいます。これは、破産手続を開始する(破産宣告を出す)のと同時に、「破産手続を廃止する」との決定を出すことです。破産手続を開始したのと同時に、破産手続を廃止してしまうのですから、つまり実際には破産手続を行わないことになります。
なお、同時破産廃止では無く「管財手続き」になるケースとして、破産者の持っている財産が概ね20万円を超える場合には、原則として破産管財人が選任されることになります。財産とは、不動産(オーバーローンの場合を除く)、生命保険の解約返戻金、退職金見込額(8分の1の額)、不当利得返還請求権(消費者金融などへの過払い金)などを主に指します。
また、会社代表者や個人事業主が自己破産申立てをする場合も、原則として破産管財人が選任されることになります。その他にも、免責不許可事由の存在が明らかである場合で、裁量免責を受けるために管財人による調査をするのに、管財手続きとされることもあります。
自己破産をする際には、裁判所へ最低2回行くことになります(同時破産廃止の場合)。
1回目は申立てのときで、「破産手続開始・免責許可申立書」とその他の必要書類を裁判所へ提出します。裁判所費用(予納金)の納付もこのときにおこないます。書類提出やその他の裁判所での手続きは司法書士がおこないますが、当事務所ではご依頼者にもご同行いただいています。
2回目は、裁判官との面接(破産審問期日)です。この破産審問期日は、自己破産申立の日から1ヶ月程度後になるのが通常です。面接といっても、事前に必要な書類をすべて提出し、文書によって事情説明などをおこなっていますから、当日になって難しいことを突然聞かれることはありません。
裁判官による面接自体の所要時間は、ほんの数分程度である場合がほとんどのようです。当事務所では数多くの自己破産申立をおこなってきましたが、破産審問期日でうまく受け答えができなかったから手続きに失敗したなどということはありません。
自己破産の申立は、申立人(債務者)の住所を管轄する地方裁判所へおこないます(ただし、営業所を有する営業者(個人事業主)の場合については、その主たる営業所の所在地に破産申立をするとされています)。
たとえば、高島司法書士事務所の最寄りである千葉地方裁判所松戸支部へ申立するのは、松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市に住所がある方です。
ご参考までに当事務所の周辺地域についての管轄裁判所は次のとおりです。その他の裁判所の管轄は裁判所ホームページの、裁判所の管轄区域でご覧になれます。
申立人(債務者)の住所地 | 管轄裁判所 | |
---|---|---|
東京都 | 東京都の特別区(23区) | 東京地方裁判所 |
千葉県 | 松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市 | 千葉地方裁判所松戸支部 |
千葉市、習志野市、市原市、八千代市、市川市、 船橋市、浦安市 |
千葉地方裁判所(本庁) | |
茨城県 | 龍ケ崎市、牛久市、取手市、守谷市、稲敷市、 稲敷郡河内町、北相馬郡利根町 |
水戸地方裁判所龍ヶ崎支部 |
土浦市、つくば市、つくばみらい市、 かすみがうら市、稲敷郡阿見町・美浦村、石岡市、 小美玉市のうち旧新治郡玉里村 |
水戸地方裁判所土浦支部 | |
埼玉県 | 越谷市、春日部市、草加市、八潮市、三郷市、吉川市、 杉戸町、松伏町 |
さいたま地方裁判所越谷支部 |
住民票の住所と、実際に住んでいる場所が違う場合には、現在、住んでいるところが住所であるとされます。よって、住民票の住所ではなく、実際に住んでいる場所の管轄裁判所に申立をします。
たとえば、東京都内に住民票がある方が、現在は千葉県柏市に住んでいるとすれば、柏市の管轄裁判所である千葉地方裁判所松戸支部に自己破産申立をするわけです。
債権者からの取り立てなどを恐れて、住民票を移さないままにされている方もいらっしゃいます。そのよう場合、必ずしも自己破産をする前に住民票を移す必要はありません。自己破産申立てをして免責許可決定が確定した後に、住民票を移しても差し支えありませんからご安心ください。
裁判所提出書類の作成は司法書士の主要な業務の一つですから、もちろん、自己破産申立を司法書士にご依頼いただけます。
裁判所への破産申立書などの提出も司法書士がおこなえますし、その後の、裁判所からの電話連絡や郵便物も司法書士宛てに来ることになります。よって、司法書士に破産申立書の作成を依頼すれば、ご自分で対応しなければならないのは、破産審問期日(裁判官による面接)時の1回のみであるのが通常です。
ただし、債権者に受任通知を送ることができるのは認定司法書士に限られますので、司法書士への依頼後すぐに督促をストップさせるためにも、認定司法書士に依頼するのが安心です。認定司法書士とは、簡易裁判所における訴訟代理について法務大臣の認定を受けた司法書士のことをいいます。
当事務所ももちろん認定司法書士事務所で、2002年(平成14年)2月の開業当初から自己破産申立を積極的に取り扱っており、認定司法書士の中でも豊富な経験と実績を有しています。とくに、千葉地方裁判所松戸支部に対して多数の自己破産申立てをおこなっております(千葉地方裁判所松戸支部の管轄区域は、松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市です)。
なお、弁護士、司法書士以外の者が、自己破産申立の業務を取り扱うことは法律で禁止されています。自己破産申立など債務整理のご相談、ご依頼をする際は、弁護士または司法書士の事務所であることをご確認ください。
司法書士が債権者へ受任通知(債務整理開始通知)を送ると、それ以降は、債権者からの連絡はすべて司法書士あてに来ることとなります。また、自己破産の申立をした後に、裁判所から送られてくる書類もすべて司法書士あてに届きます(司法書士の事務所を送達場所および送達受取人として届け出ている場合)。よって、自己破産したことを家族に知られることは通常ありません。
ただし、おもに夫の収入で生計を立てている主婦の方が、自己破産を申し立てるような場合には、夫の給与明細の提出を求めらることになるでしょうし、他にも裁判所提出書類を入手するのにご家族の協力を得る必要があるかもしれません。このようなときは、ご家族に事情を話す必要性が生じることも考えられます。
また、自己破産を申し立てることになった借金の原因がご家族にもある場合には、1人内緒で自己破産しようとするのではなく、家族に話をして協力を得るべきだといえます。ただし、家族に話すことを司法書士が強要することはありません、家族に打ち明けるかは最終的にはご自身の判断によります。
親子や夫婦など家族であっても、お互いの借金についての支払い義務を負うことは原則としてありません。借金については、家族でも他人であることに変わり無いのです。
そのため、自己破産をしても家族の誰かへ請求が行くことはありません。また、子供の進学や就職に影響が出ることも通常はと考えられるので、自己破産することで家族に迷惑がかかることは無いといえます。
また、家族の誰かが自己破産したからといって、他の家族までカードが使えなくなったり、ローンを組めなくなったりということもありません(夫の収入で生活している主婦などの場合を除く)。
(1) 保証人(連帯保証人)になっている場合
ご家族が借入をする際の保証人(または、連帯保証人)になっているときには、借り主が自己破産した場合、保証人に請求が行きます(これは、家族だから責任を負っているわけでは無く、債権者との間の保証契約に基づくものです)。
そのため、保証人も支払いが不能であるならば、保証人になっているご家族も自己破産などの債務整理をすることになるでしょう。保証人は借り主(主債務者)が返済できないときに備えて付けるものなのですから、迷惑をかけずに済む方法は無いと考えるしかありません。
(2) 借金を抱えたまま死亡した場合(借金の相続)
家族間であっても、互いの借金の支払い義務を負うことが無いのは上記のとおりです(保証人になっている場合を除く)。しかし、借金を抱えたまま死亡してしまった場合には、借金の支払い義務が法定相続人であるご家族に引き継がれることになります。
そこで、ご家族が借金(債務)を相続しないようにするためには、家庭裁判所で相続放棄の手続きをする必要があります。なお、相続放棄は生前にすることはできませんので、多額の債務を抱えていて相続放棄をすることが確実であったとしても、手続をすることができるのは相続開始後です。
自己破産申立をしても、裁判所や債権者(借入先)から会社あてに連絡が行くことはありません。
また、破産宣告が出たときには破産者の住所氏名が官報に掲載されますが、一般の企業が官報をチェックしている可能性は低いと思われます。よって、通常は自己破産したことが会社(勤務先)に知られることは無いといっていいでしょう。
ただし、勤務先からの借入がある場合、自己破産するときには会社も債権者となりますから、裁判所から会社あてに通知が行くこととなります。したがって、事前に事情を説明して協力を得られるようにしておくべきです。
万が一、自己破産したことが会社に知られたとしても、自己破産したことを理由に社員を解雇することはできませんから、会社を辞める必要は無いのが原則です。
ただし、自己破産の申立をする際には、退職金見込額がわかる資料を提出する必要があります。勤務先の就業規則の中に退職金支給規定があって、正確な退職金見込額を計算可能なのであれば、その写し(コピー)の提出で足りると思われます。
けれども、支給規定が無い場合などには、勤務先から退職金見込額証明書を出してもらうことになります。その場合でも勤務先に使い道を知らせる必要はもちろんありませんが、理由を示さずに退職金に関する資料を出してもらうのは難しいかもしれません。
この他に、給与明細、源泉徴収票なども提出する必要がありますが、通常はお手元にあるかと思いますので、あらためてご勤務先から発行してもらう必要は無いはずです。
一部の職業等では、破産者が就くことができないと法律によって制限があるものがあります。
そのため、自己破産により資格制限を受ける職業の場合、自己破産の申立をして破産宣告が出ることにより一時的にその職業に就くことが出来なくなります。ただし、破産手続が終わって免責が確定することにより復権する(破産者では無くなる)ので、その後は、資格制限はなくなります。
自己破産の申立てをしてから、免責許可決定が確定するまでの期間は3,4ヶ月程度なので(同時破産廃止手続の場合)、資格制限に抵触するのを避けるために、どうしても自己破産ができないというケースは限定されるはずです。
なお、公務員については、国家公安委員会委員(警察法7条4項1号)、都道府県公安委員会(警察法39条2項1号)など特殊なものを除いて破産による資格制限はありません。その他、学校教員、医師、看護士、薬剤師、建築士、株式会社の取締役・監査役などには破産による資格制限はありません。破産することで選挙権や被選挙権が影響を受けることもありません。
国家資格を受けて登録しないと業務ができない、次に掲げるいわゆる「士業」では、破産者であることが資格制限になっています。たとえば、司法書士となる資格を有しない者として、司法書士法5条3号に「破産者で復権を得ないもの」とあります。
また、他人の財産や生命に重大な責任を負うべき職業について、民法や社会経済法による資格制限があるのは次のようなものです。
自己破産の申立ての際には、退職金見込額がわかる資料(退職金支給規定など)の提出が必要です。なお、勤務先に退職金の支給規定が無く、退職金がまったく支払われないような場合には、退職金の無いことが分かる資料を提出します。
ここでいう退職金見込額とは、自己都合による退職の場合の退職金の額です。退職金は、現実に退職するまでは支払われるかどうか分からないものです。たとえば、会社が倒産した場合、懲戒解雇された場合など、退職金が受け取れない可能性もあります。
それでも、仮に自主退職した場合には支払われる可能性の高いものですから、破産者の財産(破産財団)に含まれます。具体的には、退職金見込額の8分の1が破産財団に組み込まれます(裁判所によっては8分の1ではない可能性もあります)。
そこで、破産開始決定申立時の退職金見込額が160万円を超える場合には、破産財団に組み込まれる金額が20万円を超えることになり、原則として破産管財人が選任されることになります。
自己破産の申立ての際、生命保険に加入している場合には、解約返戻金証明書の提出が必要です。解約返戻金証明書は保険会社に依頼して発行してもらうことになります。
正確な金額が分からなければなりませんから、保険証券に加入年数に応じた解約返戻金見込額が書かれていたとしても、それでは解約返戻金証明書の代わりにはなりません(ただし、解約返戻金が無い生命保険であり、そのことが保険証券に明記されている場合には、別に解約返戻金証明書を用意する必要はありません)。
解約返戻金見込額については、その全額が破産者の財産(破産財団)に組み込まれます(契約者貸付を受けている場合を除く)。そこで、生命保険の解約返戻金見込額が20万円を超える場合には、原則として破産管財人が選任されることになります。
長年に渡って加入している保険では解約返戻金が高額になっていることもあるので事前に確認することが重要です。申立人が保険契約者になっている保険はすべて含まれますから、たとえば学資保険に加入している場合などの解約返戻金額にも要注意です。
ローン支払い中の自動車については、クレジット会社から借入れをしている場合には、その自動車の所有権をクレジット会社が持っていることがあります(所有権留保)。この場合には、自己破産申立ての前にクレジット会社が自動車を引き上げ、オークション等で売却して換価することになるのが通常です。
売却代金をローンの残債務に充当し、それでも不足する部分についてが破産免責の対象となるわけです。また、自動車の時価がローン残金プラス20万円以上ある場合には、破産管財人が選任されることになります。
ローン支払い中では無い自動車、また、借入先が銀行などで所有権留保がされていない場合には、その時価が破産者の財産であることになります。初度登録から5年以上経過している自動車については無価値だとされることもありますが、人気のある車種などであるときには、初度登録から5年以上が経っている場合でも査定書の提出が必要となることもあります。
自己破産をする際には、持ち家(不動産)を手放さなければなりません。このことは、住宅ローンの支払い中であっても、ローンが無い場合であっても同様です。もしも、住宅ローン支払い中の持ち家を維持したまま債務整理をおこなおうとするならば、個人債務者の民事再生手続(住宅資金貸付債権に関する特則付)を検討することになります。
破産者の持ち家は、破産管財人が処分して債権者への配当の原資とするのが基本です。ただし、売却を試みたものの処分できる見込みがないとか、処分できたとしても債権者への配当見込みがないというような場合、破産管財人が裁判所の許可を得て、その不動産(持ち家)を破産財団から放棄する場合もあります。また、明らかなオーバーローンのため破産手続に組み入れることが明らかに無意味な場合は、破産管財人が選任される管財事件とならず同時破産廃止になる場合もあります。
持ち家である不動産がが破産財団から放棄された場合や、同時破産廃止となった場合には、抵当権者が不動産競売の申立てをしたり、または、任意売却への協力を求めてくることになります。いずれの方法によるにしても、持ち家は売却されて、その売却代金が債権者への返済にあてられることになるわけです。
破産管財人が選任されたらすぐに破産財団の管理に着手しますが、必ずしも破産手続開始決定と同時に持ち家を退去しなければならないとは限りません。破産申立てをする時点で持ち家に居住している場合に、破産管財人がいつその明渡しを求めるかについては、その不動産が売却できる時期の見通しにより判断されます。したがって、すぐに売却できそうなときは早急に退去することが求められることもありますし、なかなか売れる見込が無いならば当面は住み続けられることもあるでしょう。
なお、不動産がが破産財団から放棄されたり、同時破産廃止となった場合には、その不動産の管理処分権は破産者自身にあります。したがって、任意売却の場合の引き渡し時期や、引っ越し費用が用意できない場合の費用負担などについて、抵当権者と交渉できることもあるでしょう。
自己破産の申立てをする際には債権者名簿を提出します。この債権者名簿は記入漏れや間違いの無いように正確に作成する必要があります。友人や知人、勤務先からの借入れがある場合、それらの人や会社についても債権者として書かなければなりません。
破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(破産法253条1項6号)は免責されないこともありますし、虚偽の債権者名簿を提出したことは免責不許可事由に該当します(破産法252条1項7号)。
会社代表者の場合は、法人の財産と個人の財産との混同が生じやすいため、個人と法人の破産を同時に申立てした上で、破産管財人による調査がおこなわれるのが通常だと思われます。
また、会社代表者であっても、個人事業主であっても、事業を営んでいる方が自己破産申立をしたときには、原則として破産管財人が選任されます。裁判所により取り扱いの違いがあるはずですが、千葉地方裁判所松戸支部では、司法書士が書類作成をして自己破産申立をおこなった場合、破産管財人の費用は最低50万円になると思われます。
すでに事業を停止している個人事業主が申立てをした際などには、破産管財人が選任されず、同時破産廃止の手続きになることもあるかもしれませんが、本人申立て(司法書士に依頼した場合を含む)の場合には、上記の破産管財人費用がかかるのが原則だと考えておいた方がよいでしょう。
そのため、当事務所では破産管財人の費用(50万円)をご用意いただける場合を除き、会社代表者および個人事業主の自己破産申立てについては、弁護士に依頼することをお勧めしています。弁護士による申立ての場合には、破産管財人の費用が低額(20万円~)に抑えられることもあります。
かつては、当事務所で書類作成をし、千葉地方裁判所松戸支部へ自己破産申立てをした際に、破産管財人の費用が20万円だったこともあります。しかし、現在では本人申立についてはすべて最低50万円とすると裁判所から言われています。今後また取り扱いが変わる可能性はありますが、50万円の予納金が必要になる可能性が高い現状では、本人申立を躊躇せざるを得ません。