株式会社の定款変更は株主総会の決議によりおこないます。そして、定款の記載事項の中で、登記事項になっているものを変更した場合には、その変更登記が必要です。定款変更にともなう登記をすべき主なものとしては、会社の商号、目的などがあります。
定款変更による登記(目次)
1.定款変更による登記手続き
2.会社商号の決め方
2-1.株式会社の文字を使う
2-2.会社の商号に使える文字
2-3.法律で使用が制限されている名称
2-4.同一商号・同一本店の会社商号の禁止
2-5.他の会社と誤認される恐れのある会社商号の禁止
3.会社の目的の決め方
3-1.会社目的の適格性について
3-2.事業を行うにあたって許認可申請が必要な場合
3-3.商業、適法な一切の事業は会社目的になるか
株主総会において定款変更の決議をした後に、その決議内容が記載されている株主総会議事録を添付して、株式会社変更登記の申請をします。商号・目的変更の登記は、定款変更の効力が生じた日(株主総会決議の日)から、本店所在地においては2週間以内、支店所在地においては3週間以内に申請しなければなりません。
定款変更(商号、目的)による変更登記の費用
1. 登録免許税 30,000円
2. 司法書士報酬 27,000円~
3. その他実費 登記簿謄本(登記事項証明書)取得費用など
商号、目的のいずれかを変更しても、両方を同時に変更しても登録免許税の額は3万円です。当事務所ではできる限り費用を節約できる方法をご提案しております。
会社の商号を変更する際、新たな商号は次のルールにしたがって決めることになります。
2-1.「株式会社」の文字を使う
株式会社は、商号の中に「株式会社」の文字を入れなければなりません。たとえば「株式会社松戸商事」、「柏物産株式会社」のようになります。「株式会社」をカタカナやひらがなにすることは認められず、必ず漢字で表記します。
2-2.会社の商号に使える文字
会社の商号に使用できる文字は次のとおりです。
- 漢字、ひらがな、カタカナ
- ローマ字
- アラビヤ数字(1,2,3・・・)
- 符号 アンパサンド(&)、アポストロフィー(’) コンマ(,) ハイフン(-) ピリオド(.) 中点(・)
なお、符号は、字句を区切る際の符号として使用する場合のみ使用できるので、商号の先頭又は末尾に用いることはできません(ただし、ピリオドについては、省略を表すものとして商号の末尾に用いることもできます)。
2-3.法律で使用が制限されている名称
たとえば、「銀行でない者は、その名称又は商号中に銀行であることを示す文字を使用してはならない」と銀行法で定められています。銀行業の他にも、保険業、信託業などの公益性の高い事業については、同様の制限があるものが多いです。この他にも法律で使用が制限されている名称がありますから、事前に確認する必要があります。
2-4.同一商号・同一本店の会社商号の禁止
既存の会社の商号と同じ商号を、その会社と同一の場所に登記することはできません。つまり、商号、本店がともに同一の会社が2つ存在することはできないのです。かつては、既存の会社と目的が同じで、商号が同一、または類似する会社を、同じ市区町村内で登記することはできませんでした(類似商号の禁止)。
たとえば、千葉県松戸市に不動産業を営む「柏興産株式会社」が既にある場合、後から、松戸市内で同一商号を登記することはできませんし、商号が類似すると考えられる「柏興業株式会社」を登記することもできなかったのです。しかし、現在では商号、目的ともに同一であっても、本店所在地が同一でなければ登記は可能です。たとえば、「松戸市本町」と、「松戸市新松戸」に、同一商号の会社商号を登記することもできるわけです。
(参考) 商業登記法 第27条
商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。
2-5.他の会社と誤認される恐れのある会社商号の禁止
上記のとおり、同一本店で無ければ、既存の会社と同一の商号を登記をすることは可能です。しかし、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならないとされていますから、既存の会社と同一または似ている商号を使おうとする際は注意が必要です。とくに有名な企業や、商店の名前を勝手に使うことは避けるべきです。なお、商号については、不正競争防止法、商標法によっても保護されています。
(参考) 会社法第8条
第1項 何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
第2項 前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
会社の目的を変更・追加する際、新たな目的は次のルールにしたがって決めることになります。
3-1.会社目的の適格性について
会社の目的を定める際には、「明確性」、「適法性」、「営利性」の3点が求められます。
まず、「明確性」とは、一般人において理解可能な日本語であることが必要です。外国語をそのまま使ったり、ある業界だけで使われている専門用語を用いようとするときに問題になることが多いです。
明確性があるかどうかの判断は、登記実務上、国語辞典(広辞苑など)、現代用語辞典(現代用語の基礎知識など)に、その語句についての説明があるかなどにより行われています。
適法性については、そもそも違法である事業を目的として定めることができないのは当然ですが、他にも、たとえば「法律相談業務」や「登記申請書の作成」といった目的は、弁護士法や司法書士法違反になるため使用できません。
さらに、会社は営利を追求する法人ですから、利益を上げる可能性のない事業は「営利性」が無いと判断されることがあります。たとえば、「政治献金」、「社会福祉への出資」、「永勤退職従業員の扶助」が登記不可とされた事例があります。
3-2.事業を行うにあたって許認可申請が必要な場合
事業を行うにあたって許認可申請が必要な場合には、会社の目的にその事業についての記載が求められることがあります。たとえば、次のような事業を行う場合です。
一般労働者派遣事業の許可 → 厚生労働大臣への申請(都道府県労働局を経由)
特定労働者派遣事業の届出 → 厚生労働大臣への届出(都道府県労働局を経由)
古物商許可 → 警察署への申請
介護保険事業者指定 → 都道府県知事への申請
3-3.商業、適法な一切の事業は会社目的になるか
会社の目的は、明確性、適法性、営利性を満たしていればどのように定めても差し支えないのですが、通常は、「飲食店の経営」、「自動車の販売」など一見して具体的な事業内容が分かるように定めます。
それでも、「商業」、「適法な一切の事業」のように包括的、抽象的なものであっても、会社の目的として定款に定め、登記することは可能です。したがって、会社目的として「適法な一切の事業」とだけ定めておけば、許認可申請が必要な場合を除いては、目的変更をすること無くどんな事業でも行えることになります。
しかしながら、定款および登記事項証明書に記載されている会社目的が「商業」だけでは、具体的な事業内容が分かりません。そのため、他の企業や、金融機関と新たに取引を開始しようとする場合に問題になることも考えられます。
具体的に何をしているのかが伺い知れない会社との、取引を避けようとするのは当然のことだとも言えます。そこで、「商業」、「適法な一切の事業」のような会社目的を定めておきたいと考える場合であっても、具体的な目的も同時に定めておくのが良いかもしれません。
また、事業を行うにあたって許認可申請が必要なときには、会社の目的にその事業についての記載が求められることがあるのは上記のとおりです。したがって、この場合には「労働者派遣事業」など具体的な目的を定める必要があります。
なお、かつて会社の商号には「具体性」が求められていました。したがって、「商業」との目的が認められないのは当然として、たとえば、「レジャー用品の販売」、「化学製品等の製造」などの目的も、具体性がないとされ登記が出来ませんでした。それが、会社法の施行とともに、具体性の要件は不要となったのです。
定款変更による登記(株式会社の商号、目的)や、その他の会社登記(商業登記)のことで、わからない点やご相談などございましたら、お電話またはお問合せフォームから、松戸の高島司法書士事務所へお気軽にご連絡ください。
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