負担付遺贈とは、遺贈をするにあたって、法律上の一定の義務を受遺者へ負わせることをいいます(民法1002条)。この規定は、相続させる旨の遺言にも準用されます。
負担付遺贈では、財産を遺贈する代わりに、特定の誰かを世話(扶養)する義務を負わせるほか、ペットの飼育を負担させるようなことも可能です。
また、遺産を相続させる代わりに、遺言者の債務を引き継がせる遺言をするケースもあります(ただし、それによって他の相続人が債務支払義務を逃れることはできません)。
負担付遺贈を受けた人は、それを承認するか放棄するかを選択することができます。ただし、遺贈と負担はセットになっていますから、遺贈を承認するならば負担も必ず引き継ぎます。
7-1.扶養義務を負担させる遺言
遺言者およびその妻と同居している長男へ不動産を相続させる代わりに、遺言者の死後もその妻と同居し扶養するとの負担をさせる遺言です。
扶養義務を負うのが不動産を相続するに当たっての条件です。したがって、不動産は相続するが、扶養義務は負わないとの選択はできないわけです。
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記の土地を長男○○に相続させる。
(不動産の表示 省略)
第○条 長男○○は前○条の財産を相続することの負担として、妻○○が死亡するまで同人と同居し、扶養すること。
7-2.債務の承継を負担とする遺言
特定の相続人が債務を負担することを、遺言により次のように定めることもできます。このような定めも相続人間では有効ですが、それを債権者に主張することはできません。
特定の相続人のみに債務を負担させる遺言があったとしても、相続債務についての債権者は、各相続人に対してその法定相続分の支払いを求めることが可能なのです。
相続人が相続債務の支払い義務から完全に逃れるためには、家庭裁判所で相続放棄の手続きをするほかに方法はありません。相続放棄をした人は、その相続については最初から相続人でなかったものとみなされますから、相続債務を負担することもなくなるのです。
第○条 長男○○は前○条の財産を相続することの負担として、遺言者の債務一切を負担、承継するものとする。
7-3.ペットの飼育を負担とする負担付遺贈
ペットを飼育してくれることを条件に遺贈をおこなう遺言です。遺言者よりも先に、ペットが死亡してしまった場合には、遺贈をする意味がなくなるので、そのときには遺贈しないものとしています。
第○条 遺言者は、遺言者の飼い犬○○と、遺言者の有する預貯金のうち金50万円とを、○○○○(昭和○年○月○日生、住所 千葉県松戸市松戸1丁目100番地)に、上記飼い犬を終生飼育することを条件にして、遺贈する。
2 遺言者の飼い犬○○が、遺言者よりも先に死亡した場合には、前項記載の遺贈はおこなわないものとする。