遺贈(いぞう)とは、遺言者が遺言によりおこなう贈与をいいます。遺産を相続できるのは法定相続人に限られますが、遺贈によれば相続人ではない人に遺産を承継させることができます。
通常の贈与は財産をあげる人(贈与者)と、財産をもらう人(受贈者)の合意により効力が生じますが、遺贈は相手方のない単独行為です。したがって、遺言書へ遺言に関する条項を定めるのにあたって、受遺者にそのことを伝えたり、事前に承諾を得る必要はありません。
遺贈には、特定の財産を目的としておこなう特定遺贈と、「遺言者の有する一切の財産」のように包括的におこなわれる包括遺贈があります。包括遺贈では、相続財産の全部または一定の割合を包括して遺贈します。たとえば、「遺産の2分の1」のように割合によって示します。
遺言者が所有している土地を、相続人ではない孫に遺贈する遺言です。遺贈する土地が特定できるよう、不動産の表示は登記事項証明書(登記簿謄本)のとおりに正確に記載します。特定遺贈をする際に遺言執行者の指定をしておけば、相続人の協力を得ることなしに遺贈による所有権移転登記をすることができます。
第○条 遺言者は、その所有する次の土地を、遺言者の孫○○(平成○年○月○日生)に遺贈する。
(不動産の表示)
所在 松戸市新松戸一丁目
地番 100番地
地目 宅地
地積 100.00平方メートル
遺言者の全財産を、1人の受遺者に包括して遺贈する場合の条項例です。包括遺贈である趣旨を明確にするため、「包括して」のような文言を入れておくのが望ましいです。
第○条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、孫○○(平成○年○月○日生)に包括して遺贈する。
全財産を包括遺贈するのではなく、割合を示して遺贈する(割合的包括遺贈)の条項例は次のとおりです。条項例のように1人の受遺者に割合的包括遺贈するほか、孫Aに4分の1、孫Bに4分の1のように複数人の受遺者に遺贈することもできます。
第○条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産のうち2分の1を、孫○○(平成○年○月○日生)に包括して遺贈する。