土地やマンションなどを購入する際、夫婦や親子などの共有名義で登記することがあります。このときの共有持分は、実際に費用を負担した割合に応じて決めるべきなのですが、不動産会社などから適切なアドバイスがなかったために、適切でない持分で登記されてしまっている場合があります。
実際の支払額に相当するよりも多い持分割合で登記がされていると、贈与税の課税対象となる可能性があります。また、持分割合を少なくしてしまうと、確定申告で住宅ローン控除を受ける際に、所得税額から控除できる金額が減ってしまうことがあります(控除を受けられるのは自己の持分が限度)。
このような場合に、共有持分の割合を更正(訂正)するのが、所有権更正の登記です。どんな場合でも所有権更正の登記が可能なわけではありませんが、最初から共有名義で登記しており、その持分割合のみの更正(訂正)をするのであれば、登記手続きに関与するのは共有者のみで済む場合が多いです。
持分のみが誤っている場合の所有権更正登記は、更正によって持分が増加する人が登記権利者、持分が減少する人が登記義務者となっておこないます。
下記の例では、千葉太郎、千葉一郎、千葉花子が各3分の1共有名義で登記されていたのを、千葉一郎持分9分の4、千葉花子持分9分の2に更正しています。この場合、持分が増える千葉一郎が登記権利者、持分が減る千葉花子が登記義務者となるわけです。なお、更正の前後において持分に変動のない人(本例では千葉一郎)は申請人となりません。
添付書類(添付情報)について
(1) 登記識別情報 所有権を取得した際の登記識別情報(または、登記済証)
(2) 印鑑証明書 登記義務者の印鑑証明書
(3) 承諾書 添付書類として、利害関係人の承諾書が必要な場合があります。
まず、共有不動産の全体に対して抵当権が設定されている場合、その抵当権者は所有権更正登記の利害関係人となりません。したがって、持分のみの所有権更正登記で、利害関係人の承諾書が必要となるケースは多くないでしょう。
承諾書が必要となるのは、所有権更正登記によって減少する持分に対して抵当権が設定されている場合で、このときは抵当権者の承諾書を添付しなければなりません。本例でいえば、千葉花子持分に対して抵当権が設定されている場合です。
登記申請書
登記の目的 1番所有権更正
原因 錯誤
更正後の事項 千葉一郎持分 9分の4
千葉花子持分 9分の2
権利者 千葉県松戸市松戸1176番地の2 千葉一郎
義務者 千葉県松戸市松戸1176番地の2 松戸花子
添付情報 登記原因証明情報 登記識別情報 代理権限証明情報 印鑑証明書
登録免許税 1,000円 ・・・不動産1個について1,000円
所有権更正登記とは、所有権についての登記の一部が当初から実体と食い違っていた場合に、その登記を実体に合致させるためにおこなう登記です。更正登記ができるのは、一部が実体と食い違っていた場合であり、全部が間違っていたときには更正登記をすることはできません。この場合、所有権抹消登記をした上で、あらためて所有権移転登記をすることになります。
所有権更正登記ができるのは、更正の前後を通じて形式的に登記の同一性が認められる場合に限られます。よって、現在の所有権登記名義に人から、別人への所有権更正登記をすることはできません。更正登記ができるのは次のような場合で、更正の前後を通じて同一人が登記名義人に入っていることが必要です。
上図の1から4では、更正の前後で所有者(共有者)に変動がありますが、「更正後の登記名義人」の中に「更正前の登記名義人」が1人でも入っていれば更正登記をすることができます。ただし、更正の前後を通じて登記名義人に変動がある場合には、持分が減る(または持分が無くなる)部分について、所有権抹消の登記をしているのと実質的に同じです。そのため、共有不動産に抵当権が設定されているときには、多くの場合で、その担保権者の承諾書が必要となります。
不動産登記法 第68条(登記の抹消)
権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者(当該登記の抹消につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
上図の5では、更正の前後で共有者は同一ですが、持分のみが変わっています。この場合でも更正登記が可能であるのはすでに説明したとおりです。また、共有不動産の抵当権が設定されているときでも、その抵当権が不動産全体を目的とするのであれば、更正登記において抵当権者の承諾書は不要です。
関連ページ
・所有権更正登記(錯誤による持分全部移転の一部移転への更正)