被相続人の債務を引き継がないための方法として、相続放棄をする以外に、限定承認を選択することも考えられます。
限定承認とは、被相続人の債務がどの程度あるか不明であるが、財産が残る可能性もある場合などに、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐためにするものです。限定承認をすれば、相続債務が相続財産を超えている場合でも、その相続財産の範囲内で債権者への支払いをすれば済みます。
限定承認を選択するときは、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所へ限定承認の申述をします。この申述は、共同相続人全員で行わなければならず、一部の相続人だけが限定承認することはできません。
また、申述書とともに土地、建物、現預金などの内訳を記載した遺産目録も提出します。そして、限定承認の申述が受理されたら、限定承認者(または、家庭裁判所により選任された相続財産管理人)が、相続財産の清算手続をおこなっていくことになります。
つまり、限定承認をするには事前に相続財産の調査をする必要があり、裁判所への申立後には現実に相続財産の精算手続き(換価、弁済など)をしなければならないのであり、「遺産の内容が分からないからとりあえず限定承認しておく」というような理由で選択されるものではありません。
実際にも、限定承認は手続きが複雑なこともあり利用件数は多くありません。裁判所の統計によれば、平成23年には相続放棄の新受件数が166,463件だったのに対し、限定承認は889件に過ぎません。つまり、被相続人に債務があるときには、大多数の場合で相続放棄が選択されていることになります。