子の氏の変更許可(改姓、名字の変更)

子が、父または母と氏を異にする場合には、その子は、家庭裁判所の許可を得て、父または母の氏を称することができます。

たとえば、夫婦が離婚したとき、婚姻時に夫の氏(姓)を名乗っていた場合には、夫婦の戸籍から妻が除籍されることになります。この夫婦間に子どもがいて、妻が子どもの親権を持ったとしても、子どもはそのまま夫の戸籍に残ります。このような場合に、子どもが母の戸籍に移り、母の氏を称したいときには、家庭裁判所へ子の氏の変更許可申立をします。

なお、母が婚姻中の氏をそのまま使用する場合、母と子の氏は同じであることになりますが、この場合でも、母と子の法律(民法)上の氏は別々であるとされます。そこで、母と子が、民法上も同じ氏となり、同じ戸籍になるためには、家庭裁判所による子の氏の変更許可が必要となります。

1.子の氏の変更許可審判申立の手続き
2.離婚後に、母と子の戸籍を一緒にするには?
3.認知された子が、父の氏を称し、父の戸籍に入るには?

1.子の氏の変更許可審判申立の手続き

1-1.申立権者(申立てできる人)

子が15歳以上の場合には、自分自身で申し立てができます。子が15歳未満の場合には、その子の法定代理人(母など)が申し立てをします。

2-2.申立てをする裁判所

子の住所地を管轄する家庭裁判所(複数の子が申し立てる場合は、そのうちの1人の子の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることができます)

2-3.必要書類

・子の氏の変更許可申立書

・申立人(子)の戸籍謄本

・父、母の戸籍謄本(父母の離婚の場合、離婚の記載のあるものが必要です)

※同じ書類は1通で足ります。たとえば、父と子が同じ戸籍に入っていれば、父子の分は1通で良いということです。

2-4.申立てに必要な費用

・収入印紙 子1人につき800円

・郵便切手 246円分(82円×3枚) ・・・東京家庭裁判所の場合

2-5.手続きの流れ

子の氏の変更許可申立があった場合、家庭裁判所では、子の氏の変更が「その子供の福祉にかなうのか」について審理がおこなわれますが、父母の離婚にともなう場合には、書面審理のみで許可されているのが通常です。

子の氏の変更許可の審判があったときには、許可審判書謄本が送付されますので、これを本籍地または住所地の市区町村役場に持参して入籍届をおこないます。なお、届出をする市区町村と、本籍地が違う場合には戸籍謄本も必要です。

2.離婚後に、母と子の戸籍を一緒にするには?

子どもの戸籍を、父親の戸籍から母親の戸籍に移すには、家庭裁判所で「子の氏の変更許可」を得た後に、市区町村役場で子の「入籍届」をします。

まず、母と子が一緒の戸籍になるためには、「離婚の際に新しい戸籍を作る」ことが必要です。

離婚後に旧姓を名乗ることとした場合、結婚前の両親と一緒の戸籍に戻ることもできますが、そうしてしまうと、母と子どもは同じ戸籍になれません。親、子、孫の三世代が同じ戸籍に入ることはできないからです。

したがって、母と子が一緒の戸籍に入るためには、次のいずれかを選択する必要があります。

1.新しい戸籍を作り、婚姻前の氏(旧姓)に戻る。

2.新しい戸籍を作り、婚姻時の姓をそのまま使用する。

なお、母が離婚時の氏をそのまま使用したとすれば、母と子の氏は同じであることになりますが、この場合でも、母子が同じ戸籍になるためには、子の氏の変更許可が必要であるのは上記のとおりです。

3.認知された子が、父の氏を称し、父の戸籍に入るには?

結婚していない男女の間に生まれた子は、出生届を出すことにより母の戸籍に入ります。その子どもを父親が認知した場合に、法律上の父子関係が生じることになりますが、認知されただけでは、父の姓を名乗ったり、父の戸籍に入れるようになるわけではありません。

認知された子が、父の姓を名乗り、父の戸籍に入るためには、家庭裁判所による子の氏の変更許可が必要となります。

氏は単なる個人の呼称ではなく、家族的共同生活を営む夫婦とその子が共通に称する呼称でもあるから、共同生活を営んでいる父子が互いに氏を異にする場合には、子の氏の父の氏への変更は原則として許されるべきものであって、これを許すことが子の福祉にも合致するものであると解される(東京高決平成10年1月19日)。

子の氏の変更を許可するというのは、その子が父親の戸籍に入ることを許可することを意味します。よって、父親に法律婚の妻や子がいる場合には、妻およびその嫡出子らの被るべき不利益を無視してまで、父親と同一の戸籍に入ることを許可するべきかが判断されることになります。その上で、妻子らの利益を無視してまで認容されるべきものではないと判断された裁判例があります(高松高決平成5年11月10日)。

・参考条文(民法、戸籍法)

民法第791条(子の氏の変更)

子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。

2 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。

3 子が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前2項の行為をすることができる。

4 前3項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から1年以内に戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。

戸籍法第98条

 民法第791条第1項から第3項 までの規定によって父又は母の氏を称しようとする者は、その父又は母の氏名及び本籍を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。

2 民法第791条第2項の規定によって父母の氏を称しようとする者に配偶者がある場合には、配偶者とともに届け出なければならない。


司法書士高島一寛

千葉司法書士会 登録番号第845号

簡裁訴訟代理関係業務 認定番号第104095号

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(略歴)
・1989年 千葉県立小金高等学校卒業
・1993年 立教大学社会学部卒業
・2000年 司法書士試験合格
・2002年 松戸市で司法書士高島一寛事務所を開設

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松戸市の高島司法書士事務所は2002年2月の事務所開業から20年以上の長期にわたり、ホームページやブログからお問い合わせくださった個人のお客様からのご相談を多数うけたまわってまいりました。

当事務所の新規開業から2023年末までの相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)の申請件数は1200件を超えています。


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