相続による不動産の所有権移転登記(相続登記)には、いつまでとの期限はありません。しかし、相続登記を済ませておかないと、売却やその他の処分をすることができません。
また、相続登記を先延ばしにしているうちに、手続きが困難になってしまうこともあります。そのため、相続登記に期限はなくとも、お早めに手続きをしておくことをお勧めしているのです。
2021年9月8日 追記
相続登記の義務化(3年以内の登記が必要に)
不動産登記法の改正により、相続登記が義務化されます。改正法では、所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、その相続(または遺贈)により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならないとされています。
改正前の不動産登記法では、不動産の所有権など権利に関する登記について、登記申請することは義務ではありませんでした。相続により所有権を取得した場合であっても、その登記をするどうかは任意だったわけです。
それが、上記の法律改正により、相続登記を3年以内におこなうことが義務化されるわけです。なお、相続登記の申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処するとされています。
現時点では義務ではないとしても、相続登記が義務化されることは決定しています。よって、今からでも相続登記は必ずするべきだと考えて、手続きを進めていく必要があるでしょう。
なお、この相続登記の義務化は、令和3年4月21日に公布された、民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)によるものです。この法律の施行期日は、原則として公布後2年以内の政令で定める日とされていますが、相続登記の申請の義務化関係の改正については公布後3年以内の政令で定める日とされています。
・不動産登記をしないことのデメリット
上記のとおり、相続登記にはいつまでにしなければならないとの期限はありません。もっと正確にいえば、不動産の所有者が変わったとしても、その登記をすることは法律上の義務ではないのです。
したがって、不動産を相続した場合に限らず、購入したり、贈与を受けた際であっても、名義変更(所有権移転登記)をするかどうかは所有者ご本人の自由です。
それではなぜ登記をするかといえば、「その不動産を自らが所有していることを、第三者に対して主張できるようにするため」であるのが最大の理由です。とくに売買などによる不動産取引では、不動産の二重譲渡を防ぐためにも、すぐに名義変更(所有権移転登記)をおこなうのが必須です。
不動産を購入したが登記をしないでいるうちに、別の人が同じ不動産を買い受けて(二重譲渡)、所有権移転登記をしてしまった場合、先に登記した人(購入したのは後)が所有権を手に入れてしまう恐れもあります。
・相続登記の場合
不動産の所有権を相続により得た場合には、現在の登記簿上の所有者は被相続人(故人)なのですから、別の人に二重譲渡されてしまうことは考えられません。
したがって、相続登記をしないでいるうちに、いつの間にか第三者の手に渡ってしまう危険性は低いですし、すぐに名義変更をしなくても不都合を感じることは無いかもしれません。
そのため、不動産の名義が、何十年も前に亡くなった被相続人名義のままになっているというケースも決して珍しくありません。
けれども、不動産を売却するときや、家屋の建て替えに伴って住宅ローンを組む際には、その前に相続登記を済ませておく必要があります。被相続人名義のままでは、不動産を処分することはできないからです。
そこで必要に迫られて、いざ相続登記をしようと思っても、相続が開始してから長い年月が経ってしまっていると、手続きが大変になってしまっていることもあります。
たとえば、相続登記をしない間に長い年月が経ってしまえば、その間に新たに相続が発生するかもしれません(数次相続の発生)。そうなれば、相続人の数が増えたことで遺産分割協議が困難になることもあります。
また、相続が発生してから長期間が経つと、相続登記に必要な書類(除籍謄本、除住民票など)の収集が困難になることもあります。そうなると、手続に大変な手間と費用がかかることにもなりかねません(住民票除票、除籍・改製原戸籍の附票は、保存期間が5年です。その後は、廃棄されてしまい取得できなくなります)。
したがって、不動産登記の専門家である司法書士としては「相続登記には期限はありませんが、早めに済ませておきましょう」と強くお勧めしているのです。
(最終更新日:2015/08/27)
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