親から相続する不動産(マンション、土地家屋など)を、子の名義にしたいとのご相談をいただくことがあります。子である自分はすでに不動産を所有しているから、祖父から孫へ相続させたいというようなケースです。

親から相続した不動産を子に贈与する登記(目次)
1.不動産を相続できるのは誰か
2.相続した不動産の贈与
3.登録免許税、贈与税の検討
4.生前におこなえる方法(生前贈与、死因贈与、遺贈、養子縁組)
5.相続税・贈与税の対策について

1.不動産を相続できるのは誰か

親から相続した不動産を子に贈与する登記

上図の相続関係の場合、被相続人Aの相続人となるのは長女と長男Bの2人です。被相続人Aが遺言書の作成など生前対策を何もしていなかったとすれば、被相続人名義の不動産を誰が引き継ぐかは相続人全員の話し合いにより決定します。これが遺産分割協議です。

この遺産分割協議により、子1が不動産を取得するとの決定をすることは認められません。遺産を相続できるのは相続人に限られるからです。したがって、被相続人A名義の不動産を引き継ぐことができるのは相続人である長女または長男Bのいずれかに限られます。

2.相続した不動産の贈与

もしも、被相続人A名義の不動産を子1のものにしようとする場合、長男Bがいったん相続した後に、長男Bから子1に対して贈与する方法があります。

具体的には「相続を原因とする所有権移転登記」、「贈与を原因とする所有権移転登記」の2つの登記をすることになります。この2つの所有権移転登記は同時に(正確には連件で)申請することが可能ですから、1回の手続きで祖父から孫への名義変更ができるわけです。

したがって、司法書士に手続きを依頼した場合には、相続と贈与の2つの手続きが必要だとか難しいことを検討すること無しに、祖父から孫への名義変更が可能だと言ってもよいでしょう。

3.登録免許税、贈与税の検討

上記のように、祖父から孫への不動産の名義変更は1度にまとめてすることができるとしても、実際には、相続と贈与という2つの別々の手続きがおこなわれているわけです。

そのため、登記をする際の登録免許税は、相続、贈与の2件分が必要です。登録免許税の税率は相続が固定資産評価額の0.4%、贈与が2%なので、評価額が1000万円だとすれば相続で4万円、贈与で20万円がかかります。

相続人が不動産を引き継ぐならば4万円で済んだ登録免許税が、祖父から孫へ引き継がせる場合には24万円(相続4万円、贈与20万円)の登録免許税がかかるのです。

また、被相続人Aから長男Bが不動産を承継するのは相続税の課税対象となりますが、長男Bから子1へ贈与する際にはそれとは別に贈与税が課税されることとなります。そのため、相続時精算課税の選択が可能かなども事前に検討すべきでしょう。

4.生前におこなえる方法

既に相続が開始している場合、祖父の財産を孫に承継させるには、上記のように相続と贈与の2つをおこなうしかありませんが、被相続人の生前であれば次のような方法があります。

4-1.生前贈与

被相続人Aと子1との間の贈与契約により、被相続人Aから子1に対して贈与による所有権移転登記をします。生前贈与をした場合は贈与税の課税対象となりますが、孫への贈与の場合であっても相続時精算課税制度の対象となります。

4-2.死因贈与

被相続人Aと子1との間の死因贈与契約によります。贈与の効力が発生するのは贈与者が死亡したときとなりますから、贈与者(被相続人A)の死亡日を贈与の日とする所有権移転登記をおこないます。死因贈与は相続税の課税対象となります。

4-3.遺贈

遺言によります。遺贈者(被相続人A)が生前に「遺贈者の有する下記不動産を○○に遺贈する」というような遺言をするわけです。遺贈の効力発生は遺贈者が死亡したときで、遺贈の場合についても相続税の課税対象となります。

4-4.養子縁組

被相続人Aがその生前に孫(子1)と養子縁組をしていれば、相続人である養子として相続をすることが可能です。被相続人Aの遺産についての分割協議をするならば、相続人の1人として協議に参加します。養子縁組をした場合には、法定相続人として相続税の課税対象となります。

5.相続税・贈与税の対策について

死因贈与、遺贈の相続税は、孫としての相続税なので、相続税額について2割加算があります。また、孫養子の相続税についても相続税の2割加算がされます。生前に手続がおこなえるならば、どのような方法によるのがよいのか相続税等の専門家である税理士に相談するなどして検討をするのがよいでしょう。

その上で、生前贈与、死因贈与、遺贈などをおこなおうとする場合、司法書士である当事務所にご相談・ご依頼いただけます。また、当事務所から税理士のご紹介などをすることもできますので、どこから手を付けたら良いか分からないというような場合、まずは、松戸の高島司法書士事務所までご相談にお越しください。