(最終更新日:2021/10/27)

相続放棄申述受理通知書による相続登記の可否について、かつては下記の質疑応答によって否定されていました。

相続の放棄をした者がいる場合において、相続を登記原因とする所有権の移転の登記の申請をするときは、登記原因を証する情報の一部として「相続放棄申述受理証明書」ではなく、「相続放棄申述受理通知書」を提供することはできない(登研720号)。

それが、下記の質疑応答(登研808号147頁)により上記の取扱いは変更されたものとされました。

相続の放棄があったことを証する情報として、「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会に対する家庭裁判所からの回答書」又は「家庭裁判所からの相続放棄申述受理通知書」が添付されているときは、その内容が相続放棄申述受理証明書と同等の内容が記載されているものと認められるものであれば、これらを登記原因を証する情報の一部として提供することができる(登研808号)。

上記により、「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会に対する家庭裁判所からの回答書」または「家庭裁判所からの相続放棄申述受理通知書」でも相続登記が可能になったわけですが、いつでも相続放棄申述受理通知書が使えるわけではないことに注意が必要です。

というのは、上記質疑応答には「その内容が相続放棄申述受理証明書と同等の内容が記載されているものと認められるものであれば」との但し書きがあり、相続放棄申述受理証明書であれば何でも大丈夫というわけではないからです。

実際、相続放棄申述受理通知書を添付しての相続登記をしようとしたところ、事件番号申述人および被相続人の氏名相続放棄申述の受理年月日は入っているものの、「被相続人の本籍」、「死亡年月日」が記載されていないため、相続放棄申述受理証明書と同等の内容が記載されているものとは認められないとの回答が法務局よりありました。

「少なくとも死亡年月日だけでも入っていれば・・・」というような話はあったものの、本籍も死亡年月日も記載されていないのでは絶対に認められないということでした。

裁判所では、戸籍などにより相続人であることを確認したうえで相続放棄申述の受理をしているのですから、申述人と被相続人の氏名だけで十分であるとも思いますが、同姓同名の被相続人が他に存在する可能性がゼロではないので認められないということなのでしょうか(理由まではくわしく聞いていないので、よく分かりませんが)。

たとえば、千葉家庭裁判所松戸支部からの相続放棄申述受理通知については、最近のものを確認する限りでは、本籍、死亡年月日が入っていないので相続登記には使用不可であることになります。

他の裁判所からの相続放棄申述受理通知についても、「相続放棄申述受理証明書と同等の内容が記載されている」のが通常なのかは分かりませんが、結局は相続放棄申述受理証明書が必要になるケースが多いようにも思います。

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